眠る君へ捧げる調べ

       第5章 君ノ眠ル地ナバラーン〜桜龍編〜-20-

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「皆が協力すると大丈夫でしょ。」

慧は、ニコライの話を聞いてそう言った。

「ケイ、皆が協力ってどういうことだい?」

ジャンが不思議そうに言った。

「ファル、蒼龍は高度な教育機関を経営しているんだよね。」

「ええ。そうです・・しかし、最近は少しずつ入学者が減っております。

 アシュタラには、教育機関は整っておりますが実際入学できるのは

 ある程度教養が身についているものなので入れるものは限られているのですよ。」



「ニコライ、神官の中には色々なことに秀でている人がいるんだよね。」

「ええ。そうですね。今考えるといろいろな理由で神官の道を選んだ者もいるはずです。」

「そうなんだ。じゃあ、学校作ろうよ。」

「学校作るのか・・・?」ジークが驚いたように言う。



「そうだよ。学校を作るんだよ。あっ。経営は黄龍ね。」

「えっ?俺動かなきゃいけないのか?」ジャンが驚いたように言う。

「うん。基本的に神殿はやはり神殿だと思う。だからそこは経営は別にした方が良いと思うんだよね。」

「確かに・・そうだな。」

「まず抜本的に変えなきゃいけないのは神官だよね。

 イアンとニコライが相談して、神官の中で神に仕えるのではなく

 他の仕事につきたいという人を募るとよいと思う。

 もちろん、ナバラーンの全ての神殿でだよ。

 神官は、この神学校出身ばかりだから基本的な教養は身についているでしょう?」

「確かにそうですね。」

「もちろん、その人たちを教育しなければならない立場の人がいるわけだよね。

 ここで、蒼龍の出番。その代わり、蒼龍は優秀な存在発掘放題だよ。」

「確かに興味深いと思います。」

「うん。そうでしょ・・・ファルやジークは講師とかできるよね。」

「わ・・・我もか・・・?」ジークが言うと慧が頷く。

「そして、ジャン。黄龍には経営で動いて欲しい。」

「経営?何かうまみがあるのか?」

「ジャン、学校は商売の道具ではないのですよ。」ニコライが言うと慧は微笑みながら言った。

「だから、ジャンに頼んだんだよ。学校と言ったってやはりお金がなければならないよね。

 この国では悲しいけれど、身分差別もあるし生活に余裕がない人もいる。

 でも、一方で生活に余裕がある人もいるよね。だから、そこの仕組みを解決すれば良いと

 思うんだ。私が前いた所では、義務教育というものがあって15歳になるまでは誰でも

 教育を受けることができたんだ。でも、いきなり国を変えるなんてことはできない。

 だから、ビジネスとして学校を捉えてみたんだ。」

「ケイ・・・難しい話ですね。」ファルが座りなおしながら言った。

「まず、この国の平均家庭で無理なく出せる学費を考えて、通える人は学費を出して通う。

 そして、通えない人は卒業してから働いて返すという事で学校から学費の援助をできないかなと

 思う。そして、卒業してからの働き口を学校で斡旋するとしたら、優秀な人材がほしい商人とか

 働き口とかいないかな?」

「つまりそっちからも手数料取るってことか・・?確かに商売になるかもしれないな。」

「でも、ここ数年はまず試験的にいろいろとやったほうが良いと思うんだ。

 私は、自治区の事で白龍の国リャオテイを目指しているから、自治区の他にも

 この学校の話もしようと思うんだ。」




「ケイ・・・まずは、体を治すことですよ。この話は今日明日すぐにできる話ではないはずです。

 ケイの後ろには私達も控えているのですからそれを忘れないで下さいね。」

慧は周りを見た。ファル・ジーク・ジャン・ニコライがとても優しい顔で微笑んでいる。

・・・1人じゃないんだ・・・

慧は4人の顔を見ながらそう思って嬉しそうに微笑んだ。



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