眠る君へ捧げる調べ

       第5章 君ノ眠ル地ナバラーン〜桜龍編〜-19-

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異変を感じたファルとジークとジャンは

慧の病室に入ってきて、眩しそうに目を細めた。



慧がベッドの側に立って、その足元にニコライが跪いていた。

2人とも金色に光っている。




慧は、病室に入ってきた3人をみつめて手を伸ばして微笑んで言った。

「今のニコライの話で気がついたよ。ファル・ジーク。

 別れの朝、2人は私にニコライと同じことを言って指輪とピアスをくれた。

 そして、ジャン。このブレスレッドは眠っているときに

 くれたと言ってたね。

 3人は、私に知られずに銀の龍の誓願をしたんだね。」



「申し訳ありません。私のせいなのです。」

ファルがそう言うと慧は首を振って言った。

「ファルは、良かれと思ってそうする人だって私はわかっているよ。

 だから、謝ることはない。むしろ、ありがとうと言いたい。

 ただ、私の願いを1つだけ聞いてほしい。これは、ジークにもジャンにも

 お願いしたいことなんだ。」

「何ですか?」

「自分を大切にしてほしい。

 私の為に自分を犠牲にすることを考えないでほしい。

 これは、ニコライにも願ったんだ。」

3人は慧の側に跪いた。



ファルが口を開く。

「最大限、努力をいたします。」



ジークが言う。

「我も強くなり、ケイを悲しませないよう努力しよう。」



ジャンも言った。

「俺もケイを悲しませたくない。努力する。」


慧は頷いて言った。

「ファル・ジーク・ジャン。銀の龍であることを許します。

 ナバラーンの地の祝福を。」

慧はそう呟くと金色の光が3人を包んだ。



部屋中が金色に輝いて見える。

金色の光が消えると、慧は思わずベッドに座り込んだ。

ファルは立ちあがると、慧をベッドに寝かせながら言った。

「まだ、体力が全然ないんですからね。

 とにかく今は休んでください。」

そう言って癒しの魔法をかけると慧は寝息をたてはじめた。




「この力の強さは・・・凄まじいな。」

ジークは自分の手を見ながら言った。

「魔力を抑える修行を我々もしなくてはならないのですね。」

ファルも溜息をつきながら言った。

「しかし、ケイは懐が大きいというか・・・隠していたことを

 怒ると思ったよ。とにかく、良かった。」

ジャンが言った。




ファルは、ニコライの肩に手をやって言った。

「これで本当に仲間ですね。」

ニコライも微笑みながら頷いた。

「ところで、神官を辞してどうするのだ?」

ジークの問いにニコライが答える。

「ケイ様に気付かせられたことですが、この神学校に入ることを

 親が強要して無理に入学される子がいるようです。

 それで、当主と相談してそのような子を別の道で生かしてあげたいと思うのですが・・。」

「それは、難しいですね。確か神学校に入ると位を返上し神官としての僧籍に入るのでしょう?」

ファルが口を開いた。

「そうですね。生粋の桜龍なら位を持っておりますが、それ以外は無くなりますからね。」

「なんだかんだ言っても、龍社会には、位って重要だものなあ。」

ジャンが言う。



「でも、僧籍に入るかどうかは一応、桜龍の当主の判断ですよね・・・。確か・・。」

「そうですね。ファル。父上は、位を戻すことには異存はないようなのですが、

 その方が故郷に戻った時のことを考えると位を戻しただけで、

 疎まれるのに変わらないのではと懸念しておるようです。」

「確かに・・・親に入れられると言う事は何かあるわけだし・・。」

「ニコライ。あなたが教えていて特別難しい生徒ばかりですか?」

「そんなことないですよ。ほとんど皆勉強熱心ですし・・・。

 ただし、肝心な神学はあまり熱心でない者が多いような気が致します。

 それは、今考えると自然なことですが・・・。」

「ケイが起きたら皆で考えてみないか?ケイは、発想が違うから

 良いアイディア出してくれるんじゃないか?」

ジャンの意見に皆が頷いた。




急にベッドの中の慧が呟いた。

「・・・・もう・・・おな・・・か・・いっぱい・・・」

慧のそんな寝言に4人は顔を見合わせてクスリと笑った。





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