眠る君へ捧げる調べ

       第4章 君ノ眠ル地ナバラーン〜黄龍編〜-7-

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「お父様・・・その任務とは・・?」

「この子と行動を共にして、この子が為す人の自治区の販売網を

 確立することだ。」

ジャンは複雑そうな顔をした。

それは、自分が守り大きくしてきた市場のことを考えていたからだ。

「お前の市場の形態はそのままに私がそこを守ろう。

 その代わり、お前は、自治区の他に主要な都市に同様な市場を作るように
 
 努力をすると良い。」

「しかし、お父様。私のような龍族と人間が同じ所で商売すると言う考えはこの国ですら珍しいです。
 
 他の国では・・正直自信がありません。」

「ジャン、黄龍は良くも悪くも利益に繋がるなら多少自分を抑えてでも

 商売に繋げる龍だ。だから、そこを突くと何とかなるだろう。

 まあ、それぞれの国には私の信頼に叶うものが居るから人選はそのものに

 任せると良い。そして、ジャン。

 心して聞くのだ。黄龍は、魔法を使えない龍だと言われている、その代わり

 商売の才に溢れている。これが普通の意見だ。」

「そうですね。我らは魔法を使えないことを誇りに思わなければならないと

 先生から学びました。」

「実は黄龍は一部のある仕事を担う者に限り使える魔法があるのだよ。

 もちろん、私もここにいるマリオも使える。」

「ある仕事とは?」

「私が龍王様から担わされている表向きの仕事は財と商売である。

 しかし、もう1つ秘密裏に頼まれている仕事がある。

 それは、情報を集め統括するという仕事だ。

 私は、黄龍の中で情報を統括する立場にある。

 そして、ジャン。お前も私と同様の立場になると覚悟しておいた方が良い。」

「覚悟って・・・お父様・・まさか・・私が・・・。」

ロベルトは静かに頷いた。

「お前は銀の龍になる覚悟をしておいた方が良いだろう。

 そして、蒼の賢者からの伝言をお前に授ける。

 自分が為したいと心から願うときに為せばよい。

 とのことだ。」

ジャンは、呆然とした。。

あまりにも信じられないことが多くて消化できなかったのだ。

ふと、ロベルトの膝で眠る慧の顔を見つめる。

その顔は、本当に嬉しそうに微笑んでいた。






「リューゼ。」慧はリューゼに抱きついた。

リューゼは優しく慧を抱きしめる。

「慧。また大きくなったね。1年と少しぶりかな?」

「リューゼ・・リューゼ。」

慧は小さな子供のようにリューゼにしがみついた。

「そうか。負担をかけたね。」

リューゼは優しく慧を抱き寄せ、顔中にキスの雨を降らす。

「負担?」

「ああ。慧はこの1年龍族と一緒にいなかったろう?

 龍族の源は私。龍族には少しながら私の力が流れている。

 そして、ルーの位を持っているものはその力が強い。

 だから、そばにいても不安などはあまり感じなかったはずだ。」

「確かにファルとジークと一緒にいたときはリューゼに会いたかったけど

 今みたいに不安ではなかったよ。」

「それは、こうして実体化できないまでも私とお前が繋がっていれたからだ。

 しかし、この1年慧は人と生活していた。

 だから、私との繋がりがほとんど無かった。それが君の心に負担をかけていたんだ。」

「そうなんだ。」

慧は、リューゼの白いゆったりした服に顔をうずめながら言った。

「私だって寂しかった。眠っていても慧との繋がりがあると

 君の姿を夢で見ることができる。

 でも、ここ1年夢にすら君は現れなかったんだ。

 今朝、久しぶりに大きくなった君に会えた。」

リューゼはそういうとギュッと慧を抱きしめた。

2人はどちらからともなくキスをしはじめた。

この空間は限られている。

だから、今はそばにいれる実感が欲しかった。




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