眠る君へ捧げる調べ

       第3章 君ノ眠ル地ナバラーン〜闇龍編〜-7-

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「ぎゃあ・・・。」

寝室から慧の叫び声にジークフリードは居間から顔を出した。

「目を覚ましたのか?」

「ごめんなさい・・いきなりクーニャのどアップだったから。」

慧は恥ずかしそうに言った。

「体の具合はどうなんだ?」ジークフリードは優しく聞いた。

「頭・・少し痛いです・・それよりも・・あなたは?体は?傷は?」

初めて会ったときよりこざっぱりした顔のジークフリードは微笑んで言った。

「我は、ジークフリート・ルー・ヤーリュ。ジークと呼んでくれ。少年。」

「あっ。私は、ケイです。お世話かけます。」

「いや。世話をかけたのはむしろ我だ。

 体はいたって健康。力もみなぎっている。何か持ってくる。」

そう言いながらキッチンに行きスープを持ってきて「口を開けろ。」と言って

慧が口を開けると匙でスープを飲ませてくれ、薬を飲ませると慧はまた眠り始めた。

目を開けるとジークフリードは甲斐甲斐しく面倒をみてくれ、

3日目には普通に起きあがれるようになった。

「ジーク、実は料理苦手でしょう?」慧はそう言いながらキッチンに入り

小麦粉でパンをこね、フィリオに野の食べれる草を持ってきてもらい

サラダを作り、小麦粉でパスタを作った上にトマトのような実で作ったソースをかけた。

ジークはテーブルの上に並べられた料理を驚いたように眺め、

美しいテーブルマナーで食べ始めた。

「美味しい・・・。」ジークは本当に美味しそうに食べた。

「いや・・このくらいできるって。」慧は感激しているジークに言った。

「人の作ったものを安心して食べれたことなぞ無かったからな。」

「それどういうこと?」

「我は、小さな頃より他の者より魔力があった。

 だから、周りが私を暗殺しようとやっきだったのだ。」

「暗殺?親族で?」

「ああ。父上はヤーリュの当主だ。そして妻が5人。その他に愛人もいる。

 私は、一番年若い妻の息子だ。しかし、母は原因不明の病で亡くなった。」

「ちょ・・・ちょっと何で?そうなるの?」

「ヤーリュは、闇龍、魔力の力が龍の上下を決める。

 しかし、私はたまたまその魔力が強すぎた。

 そうなると父上の覚えがめでたくなる。

 すると、妻の立場も強くなったり弱くなる。」

「だからって暗殺とは・・。」

「ああ。自分で作る以外にこんな温かいものを食べたことはない。

 城にいる時は食べないようにしていた。唯一食べるのは果物だ。」

「魔力を抑えるすべは知らなかったの?」

「ああ、知らなかった。ヤーリュの仕事は龍と人の魂を終わらせ

 全てを無に戻す仕事だ。戦など起きると魔力がものを言う。

 私はそういうハードな仕事ばかり任せられているうちに

 以前以上に魔力が強くなったのだ。」

「それって・・?」

「ああ。母が死んだので私は他の妻にとって邪魔者だったのだ。

 しかし、自分の手を汚したくない者は、

 私をあの塔に幽閉して衰弱死させる方法を考えた。」

「だから・・・?」

「ああ。」

そう言いながら、ジークは急に胸を押えた。

「うっ。」ジークはそう言いながら前かがみになる。

額からは油汗がタラタラ流れ落ちた。

「ジーク・・・どうしたの?」

慧はジークのそばに来て心配そうに顔を見あげた。

「ケイ・・・憎しみはなかなか取れないものなのだよ。

 我は、母の事を考えるとどうしても不憫に思えるのだよ。」

「ジーク・・・まさか・・龍の約束?」

ジークは黙って胸を押えた。



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