眠る君へ捧げる調べ

       第3章 君ノ眠ル地ナバラーン〜闇龍編〜-5-

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「う・・・・・っ。」ジークフリードは目を覚ました。

「嘘だろう?」手と足が自由に動き胸も苦しくない。


その時自分の腹の上に重みを感じる。

よく見ると思ったよりも小さな男の子だ。

「こんなに小さな子が・・・くそっ。ここにこうしているわけに行かないな。

 しかし、この結界どうやって入ったんだか・・。」

ジークフリードは、慧を軽々と抱きあげると開けっ放しの扉を抜け、塔の階段を降りた。

塔の入り口には大きな銀色の慧を連れてきたクーニャが待っていた。

「フィリオ。」ジークフリードはそう言いながら片手でクーニャを撫でる。

クーニャは犬のようにジークフリードの足に寄り添った。

「フィリオ・・ここを逃れるぞ。」ジークフリードは、クーニャの上に慧をのせると

黒豹になり走り出した。

空を飛ぶと悪意のある者に気づかれるからだ。

フィリオと呼ばれたクーニャがその後ろを駆ける。

森を何個か抜けるとバウニャと呼ばれる黒い森に着く。

黒豹はそのまま駆け、洞窟の前で止まり人型になると

クーニャの背から慧を抱きあげた。




クーニャは急に空を見つめ、ガルルと唸った。

その時、空から白い鳥が降りて来て足に括りつけられた蒼い玉が光るとそばにファルの人型が映った。

ファルの人型は優雅にお辞儀をして言った。

「私はこの子、ケイの守護をしているファルム・リー・ソーリュと申します。

 この子は秘術を貴方に施したので一週間は眠り続けると思います。

 起きたら滋養のある柔らかいものから食べさせ、蒼い玉に入っている

 薬を飲ませて3日ほど安静にしてさせてください。それでは、よろしくおねがいます。」

ファルはそう言うと消えた。どうやら思念を玉に込めて送ったようだ。

「リーとは、随分位が高いものがついていたのだな。」ジークフリードはそう呟き

白い鳥の足についた蒼い玉から薬を取り出し、洞窟の中に入って行く。

この世界の位は万国共通で、龍王の側近、つまり各龍の当主の位がラー、

その下、龍王の城の重臣もしくは当主が認めた管轄地を治める龍の位がリー、

当主の一族、もしくは龍王が力を認めた者の地位がルー、

龍の中で責任を持つような位をもつ龍をレー、

人間で責任をもてる者の位をローとなりファーストネームとセカンドネームの間に入れる。

洞窟の中にはドアがあり、そこを開けると階段があった。

ジークフリードは慣れた感じにその階段を昇ると後ろからフィリオもついてきた。

階段を昇った所に居間があり手前と奥にドアが2個づつあった。

ジークフリードは、奥のドアを開けるとソファに掛かっている白い布をはぐと慧を横たえる。

次にクローゼットから真っ白なシーツを取り出すとベッドにシーツを敷き、クローゼットから

枕を出し慧を寝かせると布団をかけると慧が小さく呟く。


「龍星・・・・。いかないで・・・。」

そう言いながらジークフリードの手を取り頬を涙で濡らす。

部屋の中は寒いのでジークフリードは、慧の隣にそのまま体を滑り込ませ、不器用な手で慧の背中を

なでる。フィリオも寒く無いようにベッドの慧の横にあがり慧の顔を舐める。

そのまま、ジークフリードもフィリオも眠りについた。






・・・・・

「うーんとねぇ。少年は次に心の闇を持った龍に会うんだよ。

 そして助けるの。」

「それはストーリー性があるなあ・・・。まあ、確かに闇龍は親族争いがひっきりなしだな・・。」

「闇龍?何それ?」

「ふふふっ。それは内緒。」

「でも7歳くらいだよね・・その子・・・命を救うような術使えるの?」

「はははっ。それは心配ないと思うよ。ほら、何たってお話だから。」

「そっか・・・。」




「そう言えば慧、デパートでうまいもの大会やっているそうだよ。」

「龍星さん、そういうの好きなの?」

「私は、駅弁祭りなるものに興味あるんだが・・・。」

「わかった。一緒に行って買ってこよう。

 わぁーーー。一番人気のお弁当、限定200個だって。

 急がなきゃ。」

「はははっ。今日はベランダのテーブルで駅弁にするか。」

「賛成。龍星さん。着替えてくるね。」




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