眠る君へ捧げる調べ

       第3章 君ノ眠ル地ナバラーン〜闇龍編〜-4-

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長年、固定されてやつれた体に少年ともいえども倒れてくると

結構効くものがある。

「おい・・。起きろ。」

腹の上で慧の体が小刻みに痙攣する。

同時に慧の体が光りはじめた。



蒼い色と金色の光りに藍色の光りが溶け込む。

「おい・・・大丈夫か?ヤーリュの血は濃いんだ。龍人には辛いだろう?」

ジークフリードは少ししか動けない体を揺するように震わせ

慧に声をかけ続けると、慧がゆっくりと目を覚ました。

「へっ?今のは何?」慧が目をこすりながら言う。

「お前・・、知らなかったのか?龍の血をのむ事は、その龍の加護を得ることだ。」

「加護を得ること?」

「ああ。お前はソーリュの加護を受けているから蒼の魔術を使えるのだろう?

 だから、同じようにヤーリュの魔術も使える。まあ、もっとも魔力がなきゃだめだが・・。」


「魔力?そう言えば、ファルに魔力はたっぷりあるけど使いすぎは器を壊す。と言われていたっけ。」

「珍しいな。龍人は魔力を持たないのだが・・。」

「うん。じゃあ、この鎖をはずすね。」

そう言いながら慧は鎖に手をかけようとした。


「ちょっと待て。」

「何?」

「この鎖を外してもこの塔に我を閉じ込めた奴は気がつかない。

 しかし、この釘を抜くとすぐに気がつく。

 お前は、治癒の術を使えるのか?」

「ああ。使えるよ。さすがに強力なものは体力的に辛いけど。」

「あえて、強力な術を使ってくれ。そうしないと、追っ手から逃げられなくなる。

 お前は我が必ず連れ出すゆえ、頼めるか?」

慧は迷わずにわかったと言い、鞄から白いマントを取り出し身につけた。

「頼むぞ。」男は、そう言って目を閉じた。

慧が手を翳し、念じるだけで鎖はいとも簡単にとけて言った。

「じゃあ、その釘抜くよ。」慧はそう言いながら胸の釘を掴み、

一気に引き抜くと蒼の魔術を唱える。

”蒼の龍の気をこの者に、光よこの者に癒しを与えん。

 風・火・水・土の精霊よ。この者の傷を癒したまえ。

 蒼の龍の誇りと知徳にかけ全てを元に戻したまえ。”

そう唱えると、慧の胸から金と蒼い光があふれ

ジークフリードを覆う。

”雷よ。この者に癒しと刺激を”

そう言いながら慧は渾身の力で指先をジークフリードの胸に当てると

小さな電流がジークフリードの胸に走る。

「うっ・・・。」ジークがうめくと同時に慧は、ジークフリードの上に倒れこんだ。





「ケイ・・・。」遠い国でファルが北の方の空を見つめる。

「命は大丈夫そうですね・・。しかし、蒼の秘術を使うとは。

 ああ・・・そばにどなたかいるのでしょうかね・・・。

 ケイ・・言いましたよね。秘術を使うと1週間は眠りにつかなければならないのですよ。

 ああ・・本当にあの子は・・。」

ファルはそう言って白い鳥を呼び寄せ指先から出した蒼い玉を足にくくりつけ飛ばした。



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