眠る君へ捧げる調べ

       第3章 君ノ眠ル地ナバラーン〜闇龍編〜-12-

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「ジーク。何かが来るよ。」キッチンで夕食を作っていた慧は

リビングを見ながら言った。

「ケイ。こっちに来なさい。」ジークは立ちあがり慧をソファーに座らせ

その前に立ちふさがり懐から小刀を取り出すと振って大きな長刀が現れる。

フィリオは慧の横に来て頭を低くして戦闘態勢を取る。

しばらくするとバサバサと鳥の翼の音のようなものが聞こえ、



蒼と黒の鳥が室内に入ってくるとそれは、一瞬にして人の形になる。

慧は蒼い美しい長い髪を見て「リューク!」と男の人に抱きついた。

「はははっ。ケイ元気にしているようだね。少し大きくなったな」

リュークは慧を抱き寄せて言った。

「うん。リュークも元気そうで嬉しい。」

慧はにこにこ笑って言った。




ジークは、すぐに武器をしまい現れたもう一人の男に礼をした。

「父上。ご無沙汰いたしております。」

「うむ。」




その挨拶を聞いた慧は、リュークの腕から飛び降り「エイ。」と声を出しながら

膝の裏めがけて飛び蹴りをした。

男はバランスを崩し床に膝をつく。リュークもジークも驚いた顔をして固まっている。

慧は、男の前にまわって言った。

「あんたのせいでこんなに苦労かけられた息子にいう言葉がうむ?

 なにそれ? ジークはねぇ。大変だったんだよ。

 あんた、父親なんでしょう?

 なんで、ジークを抱きしめてやらないの?」

慧はポカポカ男の人の胸を叩きながらどうしようもない気持ちになり

わーわー。泣き出した。




「ケ・・・・ケイ・・・。あんまり泣かないほうがいい。」

あわててリュークが言う。

そう言っているうちに外は曇りザーザー雨が降ってきた。

遠くで雷鳴も聞こえる。

急にリュークの金のチョカーとジークの父の金のピアスが光り慧を包むと

慧はジークの父の方に倒れていった。



「これは・・・。」ジークの父が驚いたように言いながら慧を支える。

リュークは溜息をついて肘掛け椅子にどっかり腰を降ろした。

「フェル・・どうやらあなたが悪いようですね。

 ケイは私達の腕の中が一番安定するのですから、そのまま抱いているのですよ。

 ジークでしたっけ?

 私は蒼龍の当主リューク。ファルの父です。

 どういう経緯でケイと暮らしているのか

 話してくださいね。」

にっこり微笑むリュークはある意味すごく怖かった。











「もう大丈夫だよ・・慧・・・。」

「リューゼ・・・。」

夢の中でリューゼは慧を抱きしめる。

「久しぶりだね。慧。」

「リューゼ。ギュッとして。」

慧は、リューゼの膝に乗りながら言った。

「慧・・・・愛しき人・・。」

リューゼは、慧を抱きしめて顔中にキスの雨を降らす。



「ねえ。リューゼ。何で俺、ここにいるの。」

慧は、リューゼの逞しい胸に顔を埋めながら言った。

「慧・・・君はもう、ナバラーンで一番私に繋がっている。」

「それは、どういう意味なの?」

「ナバラーンの重要決定は今でも私がしている。

 それは、声によってだ。

 でも、魂だけの存在と言いながらも、私とこうして

 触れあい語り合うことができるのは慧だけなのだ。」

「うん。」

「それに、慧は私の加護を受けている。

 そして、この世界を作ったのは私だ。

 だから、慧の感情がこの世界の天気をも左右することがあるということを

 覚えておいてほしい。ここに来る前、慧はすごく腹をたてていたね。」

慧は頷きながら言った。

「うん。久しぶりに頭にきた・・。そして、同じくらい悲しかったんだ。」

「そう。慧は気づかなかったかもしれないけれど、外は雨が降り、雷も鳴っていたはずだ。」

「えっ。俺の感情が天気になるの?」

「ああ。でも、自分の中に冷静な心があればそういうこともない。

 だから、難しいかもしれないけれど、これから腹が立った時には

 深呼吸をして心を落ち着かせるんだよ。」

リューゼは優しく慧の頭を撫でながら言った。

「わかった。努力してみるよ。」

慧は、リューゼにもたれかかりながら言った。

「慧、早く君に本当にキスをしたいよ。

 ・・愛してるよ・・・。」

リューゼの腕の中はすごく居心地が良かった。

「リュー・・・・ゼ・・夢・・・終わっちゃうよ・・・。」

「慧・・私の慧・・・。私の心はいつでも側に・・・。」







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