眠る君へ捧げる調べ

       第3章 君ノ眠ル地ナバラーン〜闇龍編〜-11-

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そこには、大きな銀色で背中に白い羽根がついているフィリオが器用に前足で慧を抱えていた。

「フィリオ・・お前は・・・。」

「ああ、この聖なる空間では私も偽りの姿ではいれなくなったのです。

 ジークフリート、ヤーリュは、隠された使命を持つ。

 あなたが父から認められていたのは魔力の強さではないのです。」

「何だって?」

「ヤーリュの隠された使命は聖獣を育てること、だからあなたの父は

 誕生日にそれぞれ好きな動物をプレゼントした。」

「確かに・・フィリオは、私が5歳になった時に父から贈られた。」

「ああ、その時は私もただの獣だった。しかしジークフリートは私を大切に育ててくれた。

 私は、あなたが15歳になった時聖獣になった。

 だから、あなたの父はあなたのことを認めていたのです。

 龍王様は、魂を送るという一番辛い役割を闇龍に与えました。

 しかし、だからこそ、命の大切さを一番わかっている闇龍だからこそ

 獣を慈しみ、そして聖獣にする力を与えたのです。

 しかし、当主以外にそれを知っているものはいません。

 本当は、もっと早くこのことを伝えたかったのですが・・

 ジークフリートを守りきることができませんでした。

 申し訳ないです。」フィリオは悲しそうに言った。

「あれは、仕方のないことだよ。フィリオ。

 それにヤーリュを在るべき形に戻すのは父上だ。

 我が銀の龍になると一族には関わりがなくなる。

 だからここで聞いておいて良かった。」

「覚悟を決められたのですね。」

「ああ。ケイが龍の花嫁だから銀の龍になろうとは思わない。

 我は、ケイがケイだから守る存在になりたいと思う。

 近い将来ケイと別れるときに誓願の儀をする。」


「そうですか。ジークフリート、私はいつも貴方と共に・・・。」

ジークは首を振って言った。

「フィリオ、我の代わりにケイの側にいてくれ。

 ケイは抱えるものが大きい。」

「御意。誠心誠意お仕え致します。」

「ケイは本当に龍王の花嫁になると思うか?」

「愚問ですよ。ジークフリート。この御方がなれなくて誰がなろうというのです。」

ジークは慧を抱きあげながら言った。

「ケイの為にも、私もこうしてはいられないな。

 しかし、闇龍のことを父上には伝えないと・・。」

「あせる必要はありません。・・たぶん、この子が時期を作ってくれます。

 それを待った方が良いでしょう。」

「フィリオ?」

「聖獣は少し後の未来は見えるのですよ。」

フィリオはそう言うとウィンクをして茂みの道を歩き始めた。

外に出るのと同時にフィリオの体も元に戻った。

ジークも黙ってその後に続いた。




ジークは、ベッドの上で気がついたケイに食事を運び、

睡眠効果のある薬草入りのお茶を飲ませ、眠らせると

フィリオに後は頼んで闇夜に消えた。


ジークは東の国アシュタラの海岸に降り立った。

そこには、白いマントに身を包んだ男が立っていた。

「ジーク、決心致したのですね。」

「ああ、ファル。我もあの子と別れの日、誓願の儀を行う。

 なので、それが終わると銀の龍として共に歩くことになろう。」

「そうですね。貴方とは長いつきあいになりますね。

 それでは。」



ファルは、目を閉じ神経を集中させ、銀色のチョーカーを握って言った。

「我の名。ファルム・リー・ソーリュ。

 我は蒼き銀の龍。

 銀の龍は花嫁の龍。花嫁は、龍王より尊き存在。

 銀の龍は個では成り立たず、全ての龍が揃わねばならぬ。

 金の龍の繋がりが龍王との血であるならば、

 銀の龍の繋がりは、縁(えにし)・・・深い絆。

 我が同胞として、ジークフリート・ルー・ヤーリュを迎えいれ、

 共に過ごし、共に花嫁を守ること。ここに誓わん。」



ジークも目を閉じ、耳元の銀色に変わったピアスに手を添えて言った。

「我の名。ジークフリート・ルー・ヤーリュ。

 我は闇の銀の龍。

 銀の龍は花嫁の龍。すなわち我はケイを護り慈しむ存在。

 しかしながら、花嫁は個の力だけでは護れず。

 銀の龍が揃うことが必然。

 我が同胞として、ファルム・リー・ソーリュと共に過ごし、

 共にケイを守ること。ここに誓わん。」

すると、ファルのチョーカーとジークのピアスから銀の光りが

出て繋がった。



「「この絆。

  血より強いことをここに誓わん。

  全ては、ナバラーンの花嫁の為に。

  常に誠実であらんことを。

  決して裏切らないことを。」」



2人の周りを銀色のまばゆい光りが包んだ。

ジークは、光りが止むと手を差し出し、

ファルはにっこり微笑みながらその手をぎゅっと握った。




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