眠る君へ捧げる調べ

       第2章 君ノ眠ル地ナバラーン〜蒼龍編〜-3-

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「ケイ・・?大丈夫ですか?」

ファルはしばらく歩いていった。

5歳児にしてはもう沢山歩いている。


「うん・・・。」

気分はまだ大丈夫なのだ・・。

ファルは小さく微笑むと慧をヒョイと片手で抱きあげる。


正直、それはすごくありがたい・・ありがたいのだが

慧のなかは大人だ。なので、すごい気恥ずかしい。

「ファル・・・だい・・じょぶ・・・。」

ファルはにっこり微笑んで言った。


「無理をしないので良いのですよ。私も良い運動になりますしね。」

慧は少し赤くなって俯いた。

ヤギは心配そうに慧を見て言った。

『大丈夫?熱でもでたかな?もう少しで着くよ。』


少し歩くと茂みの前で足をとめた。ファルは不思議そうな顔をする。

ここまではファルも何度も来たことがあるからだ。

「ファル、降ろして。」

慧はそう言うと、ファルは抱えていた慧を静かに下ろした。


慧が茂みに足を踏み入れるとツルで覆われた部分が道を作る。

ファルは驚いて慧の後ろを歩いてついていく。

ヤギはどうやら引き返すらしくついてこないばかりかファルが歩いた後から

ツルが道をふさぐ。



慧はただまっすぐ突き進んだ。

そこを出たところは、中庭のような場所だった。

真ん中に青く光る泉がある。

周りを見渡すとそこにあるのは貴重な薬草ばかりだ。

しかし2人は、まっすぐに真ん中の泉に向った。

そこに引き寄せられる感触があったからだ。

泉の中には蒼い石が2つ光を放っている。



「・・・・・こ・・・れは・・・。」

ファルがそれを見て絶句した。

「ファル?何?」慧がファルの顔を見て言った。




龍王の寿命は1000年と言われている。

なので、前龍王が妻を迎えた話になると伝説の話になってしまうのだ。

しかも、前龍王の妻は今の龍王の卵を産んですぐに謎の死を迎えているので

龍王の妻についてはほとんど何も残されておらず、言い伝えによるものが多い。



この世界の龍は全部で8種類の種族と金龍に分かれる。

蒼龍(ソーリュ)・紅龍(コーリュ)・黄龍(オーリュ)・白龍(ハーリュ)

・翠龍(スーリュ)・紫龍(シーリュ)・闇龍(ヤーリュ)・桜龍(サーリュ)

の種族の現当主は、ある年齢に達すると次期龍王と同じ時を刻むため

眠りにつき、前龍王と前当主が没した後新龍王と伴に目覚め同じ時を刻む。


普通の龍は必ず自分の種族の色の玉を装飾具として身につけ、

龍になるとその装飾具は玉に変わる。


それには例外があって当主の玉だけが金色でありそれが、金龍の花嫁の間にできた子供の証

とされるが当主がどのようにして生まれるのかは謎である。


当主は、普通に妻を娶り子を成す。

特に直系の龍の血が濃い子供には名前と苗字の間にルーと言う称号がつく。

ルーと言う称号を受けた者の中で選ばれた者は龍王の花嫁と伝説の石で強い結びつきを持つと言われている。


しかし、誰もその石がどこにあるかはわからない。龍の花嫁と選ばれた者だけがその石にたどりつくことができる。

ファルム・ルー・ソーリュ。ファルもルーの称号を持っているのだ。



ファルは傍らの小さな慧を見た。

金の龍の祝福を得た龍人。

金の龍はただ1人の龍王。龍王自ら祝福を与えたと言う記録はどこにもないが

あの肩の痣、そして動物と会話をしこの場所に来れたということは

この小さな慧が龍王の花嫁かもしれない。


同時にファルは眩暈がする思いだった。

慧に色々なことを教えるのは知と癒しを司る龍の自分ということに・・。



ファルは大きく息を吸い込みながら、あるがままを受け入れようと思った。

そして、小さな慧に優しく話しかけた。


「一緒にあの蒼い石を取りましょうか?」

慧は頷いてファルと同時に石を取った。

すると蒼い石は慧とファルの手にすっと吸い込まれていくと、慧はそのまま倒れ、

ファルも慧の体を支えるように倒れた。



しばらくしてファルは、目を覚まし傍らに倒れている慧をそっと抱きしめた。

そのまま龍の姿になり、高く浮上する。

すると、さっきの広場も泉もツルのような草に囲まれて見えなくなった。

森の小屋に降り立つとファルは自分の玉を見て息をのんだ。

ファルの玉は青色と銀色が混ざったような色でキラキラ光っていた。



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