眠る君へ捧げる調べ

       第2章 君ノ眠ル地ナバラーン〜蒼龍編〜-1-

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  ※「」は、日本語『』は異国語です。



・・・あたたかい・・・



慧はそっと目を開けた。

『気がつきましたか?』

目に見えるのは、どこまでも青い眼。

そして、長い青い髪に床まで届く白いマント。



「あっ・・・。」慧はうまく声がでなかった。

背中を軽く起こされ口元にコップをあてがわれる。

『飲みなさい・・ぼうや。』

何を言ってるのかわからないけれど慧はおとなしく口を開くと

冷たい水が流れ込んだ。

『良い子だね・・。』男はそう言って頭を撫でる。




慧は、ふっと自分の手を見て驚いた。

・・・小さい・・・

ぷくっとふくらんだもみじのような手だ。



驚いて男の人を不安そうに見あげる。

『怖い思いをしたんだね。もう大丈夫。』

男はそう言って微笑んだが慧はきょとんとしている。

「あの〜。」

男は慧を驚いたように見つめ、部屋の隅の大きな本棚から本を取り出して広げた。

『そうか・・・この子は・・・』

男は納得したように頷き裸の肩に光る金の龍の痣に手をあてた。

”ぼうや・・・わかるか?”

優しい声が頭に響いた。

「わかります。」

慧が言うと再び頭の中で声が響いた。

”言葉が違うようだから、頭で思うだけで良い。”

”わかりました。”

”やはり、君は龍人か・・・。”

”龍人・・?”

”いいんだよ。今はそんなこと気にしなくて。とにかく、ぼうやは疲れている。

 ゆっくりお眠りなさい。目をつぶって・・・。”

男はベッドに慧を入れると優しく上掛けを掛けてくれ、手を翳すとそこから蒼い光が慧を包み込む。

すると、慧はまた眠り始めた。






あれは・・・・まだ・・・龍星と一緒に暮らしていた時

居間で・・・


「龍星さん、最初に男の子が出会う人は重要だよね。」

「重要?なぜ?」

「だって、その人の生き方ってその男の子に影響かなり与えると思うんだ。」

「確かに最初出会う人は大切だな・・。」

「うん。俺だったら、賢い人がいいなあ。」

「賢者が良いんだな。何で?」

「だって、はじめはその世界について知らなきゃいけないと思うんだ。

 そして、俺なら医者みたいな人と出会いたいなあ。」

「ほう・・じゃあ・・・蒼龍からか・・・。」

「蒼龍?」

「いや・・こっちの話・・・さっ。話まとめるぞ。」

「龍星さん、コーヒー淹れるね。」

「ああ。頼むね。」




”蒼龍・・”





男の頭の中に小さな子供の声が響く。

男は、優しい目で子供を見つめる。

ここはファティモという森。

ファティモには蒼い龍族しか入ることができない聖域があり、

その真ん中に聖なる湖がある。

朝、男が聖なる湖のほとりで瞑想をしていると

金の光が天から降り、少年が静かに落ちてきた。

『金の光・・?この蒼い湖に・・・。』

男はそう言いながら立ちあがり湖を泳ぎその少年をだきあげると

住んでいる家に戻って暖かい毛布に少年をくるみ、暖炉に火を入れた。

『外見は人間ですね・・・なぜ?』

男はそう言いながら濡れた服を着替え、部屋があたたまると

裸の少年を乾いた布で拭いた。

その時、少年の肩に金の龍の痣があるのが見えた。

痣というより、金の龍が埋っている感じだ。

その存在は伝説のものしかないと言う金の龍人。

少年が起きて知らない言葉を話し、確信となった。

そして・・今この少年は自分の正体を呟いた。

『さすがは金龍の加護がありし龍人。よくおやすみなさい。』

男はクスリと笑いながら小さな家をでた。

一瞬で男は蒼い龍になり、森の上を舞いあがり聖なる湖に飛び込んだ。




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