眠る君へ捧げる調べ

       第10章 君ノ眠ル地ナバラーン〜王宮編〜-6-

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「なぜ、金の龍人だと隠しているのですか?」

メリッサは、サイシュンに聞いた。

「ケイ様は、ありのままのナバラデルトを知りたいと考えました。

 誰に聞かれるでもない、自分でナバラデルトのことを語りたいと考えたようです。

 それには金の龍人という立場は邪魔なのですよ。」



「邪魔だなんて・・・。」エドワードが言った。

「邪魔じゃないのか?もし、仮にケイが金の龍人だとわかったとしよう。

 そうしたら、周りは精々ケイにちやほやするだろうよ。

 ケイはそんな生活は花嫁になってからで良いと思ってるんだろうな。

 ケイには、今しかできないことがある。

 それが、銀の龍の俺らの意向から外れていてもだ。」

アルがそう言った。



「ケイ様にとって龍や人や肩書きや名声なんて

 あんまり重要でないです。そして、私達銀の龍ですら

 ケイ様は配下なんて考えておりません。」

「じゃあ、何なのですか?」エドワードが言った。

「俺達は、金の龍の理を外れた時点でケイの家族だそうだ。

 そして、その他は友達。シンプルだろ?」



「ケイ様、実家でも友達と言ってくれた。

 母さんに僕を守ってくれるって言ってくれたんだ。

 今日はきっと僕の為に街に来てくれたんだ。」

テリオが俯いてそう言った。



「確かに、人の街の者は龍や龍人を毛嫌っておりますからね。

 そう・・・それで・・・。」エドワードが言った。

「それでも、ケイは違う目的で言ったと言い張るだろうよ。」

アルが微笑んで言った。



「そうだよ。私は市場を見てみたかったんだ。」

そんな声がして慧が寝室から出てきた。



「ケイ様・・・大丈夫なのですか?」サイシュンが言った。

「うん。はりきりすぎて疲れちゃったんだ。休んだから大丈夫。

 それに、ここはやはりあの方に近いんだね。

 疲れが取れやすいよ。それで・・話したんだね?」

慧はそう言いながらソファに座った。



「ええ。他の銀の龍の許可は取っております。」

「げっ・・・。皆街に出たって知ったの?」

反応するところはそこか。その場にいた者は心の中でそう思った。



「ええ。皆、心配してましたよ。」サイシュンが穏やかに言った。

「うん・・皆に大丈夫。心配してくれてありがとうって言って。」

慧は紅茶をメリッサから受け取りながら言った。



「それでね。話は聞いたんでしょう?」

エドワードとメリッサとテリオは小さく頷いた。



「私はね。別に今の体制が悪いと思っているわけではないんだ。

 話を聞いた感じでは方向性が違う人が上に立っているというだけだよね。

 このままなら、1年後良くも悪くも大騒ぎになると思うんだ。

 私は城が混乱するのは構わないけれどそれによって多くの人が

 まともな生活を送れないのは問題があると思う。

 まずは私に優秀な貴族の講師を何人かつけるようにエドワード考えてよ。

 それからメリッサは、城の中で優秀な人達を探って、

 テリオは、街の有力者で協力者になれそうな人を探って欲しいんだ。

 見分けるコツは、身分や名声を気にしない人。」



お茶を飲んで気軽に話すような話題ではないことを慧は軽く言った。

エドワードとメリッサとテリオは驚いたように慧を見つめていたが

できるだけのことはすると言ってくれた。




「あっ。ケイ様、明日の午後、花嫁候補の方が

 お茶会をすることになっております。

 いかが致しますか?」

エドワードは思い出したように言った。

「お茶会?出席しなきゃならないんでしょう?

 正直面倒だなあ。」

慧はそう鼻に皺をうかべながら言った。



何だかまた一波乱ありそうな雰囲気である。




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