眠る君へ捧げる調べ

       第10章 君ノ眠ル地ナバラーン〜王宮編〜-5-

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アルが慧を抱きかかえて部屋に行き、

ベッドに慧を寝かせた。


不安そうに部屋についてきたテリオに

「大丈夫ですよ。」とサイシュンが微笑んで言った。

部屋にはエドワードとメリッサもいて

心配そうに慧を見つめた。



「お医者様を呼びましょうか?」

と言うエドワードにアルが首を振って言った。

「たぶん、大丈夫だ。本人も疲れたと言ってたから

 休むと大丈夫だと思う。ところで、慧は今日何を

 していたか教えてくれないかね。」



皆は寝室から居間に行くとメリッサがいつもと同じように

お茶を淹れ、テリオは慧が土産と言って買ったお菓子を

テーブルにのせた。

皆が席につくと、テリオは朝、慧と出会ってから

夕方別れるまでのことを話した。



話し終わると、アルとサイシュンが深い溜息をついた。

「1日のうちに何個も魔術を次々と・・・。」サイシュンが疲れたように言った。



「あの?どういうことなんでしょうか?」エドワードが聞くとアルが答えた。

「まず、姿を消したのは、闇龍の魔術。

 そして、姿を変えたのは紫龍の魔術。

 妹さんに花束を出したのも紫龍。

 そしておそらく、怪我人を癒した時使ったのが

 闇龍の結界術を使って蒼龍の癒しの術を使ったのだろう。」

「たぶん、市場では黄龍の交渉術も使って、

 もしかしたら、テリオの家に龍の祝福くらいはしたのでしょう。」

サイシュンも言った。



「普通の龍人は、1つの龍が守護龍になっているのですよね。」

メリッサは、不思議そうに言った。

普通の人は、1つの龍の加護を受ける器しかない。

それを越えると、肉体に影響がでる。



「論より証拠と言うな。たぶん、今の慧は素に戻っている。

 服の中に刀も現れていたしな・・・。

 ただし、エドワードもメリッサもテリオも

 この事は誰にも話さないことを誓って欲しい。」

アルがそう言うとエドワードはきっぱりと言った。

「もちろん、仕える主のことは言外致しません。」

「私も同じく話さないことを誓います。」

メリッサが言うとテリオも口を開いた。

「僕も話しません。」



サイシュンはアルに言った。

「話したほうが良いと思います。

 エドワードもメリッサもテリオも

 今から覚悟は決めたほうがよいと思いますし・・。」



「我々の一存ではだめだろう。

 少し待ってくれないか?」

アルとサイシュンは椅子に座り目を閉じた。





「アル・・・サイシュン・・・ケイに何かあったのですか?」

ファルの声が聞こえる。

「また、無茶をしたってところか。」あきれたようなジークの声が聞こえた。

「2人を振り切って街にでも出かけた?」ジャンの声がする。

「ああ・・ありえるな・・・。」アハドの声もする。

「それで、ケイ様は、大丈夫なのですか?」ニコライの心配そうな声が聞こえる。

「ケイをゆっくり休ませてね。」ルイも心配そうだ。



サイシュンとアルは、説明をすると銀の龍達は皆が深く溜息をつき

2人にねぎらいの言葉をかけた。

エドワードとメリッサ、テリオに真実を話すことも了承されて

サイシュンとアルはほっとした中、意識を元に戻した。




エドワード、メリッサ、テリオは慧の寝室に入り、

慧を見て驚いた。

慧の周りを金色の光が優しく囲んでいたからだ。



アルが慧の布団をはいで、慧の肩をあらわにした。

そこには、金・蒼・闇・黄・桜・紫・翠・白・紅の龍の痣が

並んでいた。

「こ・・・これは・・・?」

エドワードは震える声で言い、メリッサは驚きのあまり両手で口を覆った。

テリオも目を丸くして固まっている。



「そうです。ケイ様は伝説ともいわれる金の龍人。

 そして、今上龍王の花嫁に間違いなくなる方です。」静かにサイシュンが言った。

「じゃあ、貴方達は・・・?」メリッサが言うとアルが頷いて言った。

「ああ俺達は、銀の龍。他にもいるが、ケイ様の希望で我々がそばにいる。」

あまりにも大きな事実にエドワードもメリッサもテリオもただただ、呆然とするだけであった。





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