眠る君へ捧げる調べ

       第10章 君ノ眠ル地ナバラーン〜王宮編〜-14-

本文へジャンプ




「メリッサ・・・飾りすぎだよ・・・。」

慧は鏡の前で溜息をつきながら言った。



「いえ。今日の服は、黄の当主様からの物ですし、

 宝飾品は、闇の当主様からです。

 それに他の当主様達からも服やら宝飾品が届いているので

 いつも以上に私も腕をふるいますね。

 特に今日の宝飾品は、良くお似合いですわ。」

「ああ、これはフェルだよね。

 フェルは、よく私に服や宝飾品をくれるんだ。

 当主様の中で一番センスが良いと思うよ。」


「そうなのですか?闇の当主様は怖い感じがいたしませんか?」

「怖い?まさか。

 フェルはね。無口だけどとても優しいんだよ。」

慧はそう言いながら嬉しそうに微笑んだ。





それから慧はエドワードに案内されて花嫁候補の控え室に入った。

今日はこれから龍の当主達と人の城の重臣と夕食会があるのだ。

慧が挨拶をしてもロゼとレラとリセは挨拶を返さず

軽く頷いただけだった。



レラがこれみよがしにロゼとリセに話しかけた。

「龍人の分際で花嫁候補など、信じられませんわ。

 いまだに、同じ部屋にいるなんて・・・。」

「ふっ・・・今日もみすぼらしい服着ていて。ねぇ。ロゼ様?」

リセもそれにのって言う。

「生意気に宝飾品もつけている。まっ。どうせ、偽物だろうけど。

 本当、同じ部屋にいるのも嫌だね。」



ロゼがそう言ったところで夕食会の会場に案内する者が入って来た。

夕食会の会場に行くと、急にロゼもレラもリセも態度が変わった。

慧も挨拶をしたが、人の重臣達はそれに返しもしなかった。



一方、龍の当主達はにこやかに慧に挨拶を返した。

それから、夕食会がはじまった。



リュークやイアンがナバラーンの政治問題について

いくつか話しをしたがそれに加わったのは

当主達と人の城の重臣の一部、そして慧で

他の花嫁候補は退屈そうにしていた。



話を変えようと人の重臣の1人、レラの父親が言った。

「花嫁候補の席順がこれは変ではないですか?

 なぜ、ロゼ殿が上席ではないのですか。

 そのように資料を提出したはずですが・・・。」

「ああ、資料は拝見いたしましたがこの席順でよろしいですよ。

 それにあの資料は不備ですしね。」

リュークが淡々と答えた。



「不備・・・ですと?」重臣の1人が怒ったように言った。

「そう。カイ殿に関する記述が不備だよな。

 どうせ、カイ殿に直接聞かずにカイ殿の肩を見ただけで

 白の龍人だと思ったのだろう。」

ガイが口を開いた。


「し・・・かし・・・申込書には白龍の当主の祝福を

 受けたと・・・。」

「確かにカイ殿は私の祝福を得ているが、それだけでない。」

リンエイが口を開いた。

「では・・・?」



「慧ちゃん、翠龍の術を解いて肩を見せてあげな。」

イツァークが言うと、慧は小さく頷き

小さく呪文を唱え肩をあらわにした。

そこには、金・蒼・闇・黄・桜・紫・翠・白・紅の

龍が並んでいた。




「うそだ・・・。」

ロゼの父が口を開き、顔色がみるみる間に青くなった。

「父様・・・。何なのですか?」

事態が飲み込めてないロゼが口を開く。



「本当に花嫁候補の割には無知なのですね。

 カイ殿と呼ばれているこの方は

 金の龍人であり、龍王の花嫁になる方です。

 大体、あなた方は何なのですか?

 龍王の花嫁はお飾りで務まりません。

 政治の話1つできなくてどうするのですか?」

イアンが言うと、レラ、リセが真っ赤になって俯いた。

ロゼは拳を握りしめてブルブル震えていた。



「そして、俺達は知っているぜ。

 この子が人の城でどのような処遇を受けたか。」

ロベルトが言うと人の城の重臣は皆真っ青になった。

慧が花嫁になると人の城の主は慧になる。

その時、自分は今の地位を守っていれるか

重臣達には自信がなかった。





その夜・・・

慧は、眠れなくてバルコニーに出た。

「リューゼ・・・。」

慧はそう言って呟いた。



やはり会いたいと思った。

その時、慧を慰めるように金色の光が慧を覆った。

「会えなくてもいつも私はそばにいるよ。・・・か。」

慧はリューゼと最後にあの空間で会った時のことを思い出した。



「そうか・・いつもそばにいるなら、

 声が聞こえるように歌えばいいんだ。」

慧は歌い始めた。

愛しいリューゼを思って・・・。



   ナバラーンで愛しいもの。それは全て。         

   全てが愛しい君が創りしもの。              

   全てが愛しい君が愛するもの。              

   ナバラーンで愛しい人。それはナバラーンの人達。   

   そのなかでも一番愛しき人は眠る君。           

   眠る君へ届いてほしい。                  

   この愛する地ナバラーンの歌を・・・。  







  BACK  NEXT 

 Copyright(c) 2007-2009 Jua Kagami all rights reserved.