眠る君へ捧げる調べ

       第10章 君ノ眠ル地ナバラーン〜王宮編〜-13-

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ロゼとレラとリセは、馬鹿にしたような

面持ちで慧の到着を待っていた。



龍王の城に入ったところで花嫁候補は馬車を降り

中庭まで花嫁行列を作る。

花嫁候補は輿に乗せられ召使にかつがせ

その後を契約した龍が歩く。

そして、沢山の使用人が続く。

中庭についた花嫁候補は、形式的な挨拶を高い場所に

座っている当主達から受け、使用人の数を聞かれ花嫁候補の席に座る。



3人とも慧がエドワードとメリッサとテリオしか連れないで

馬車に乗っていることを知っている。

だから、慧の花嫁行列は質素なものだと決め付けていた。





遠くから美しい紫龍の歌声が聞こえてきた。

「花嫁候補・・カイ様のおつきです。」

龍の重臣が重々しく告げると中庭の門から、まずは紫龍達が

祝福の歌を歌いながら入ってきて門の両脇に並び歌い続ける。

その後に桜龍の神官が祝福の祈りを唱えながら続き、

次に蒼龍・翠龍・黄龍・白龍・闇龍の者が続いた。

皆が二手に分かれ紫龍の後ろに整列した。

その後にお揃いの制服を着た紅龍の兵士が行進し紫龍の前に

二手に分かれて整列した。



急に紫龍の歌がやむと紅龍以外の龍全てが

跪き頭を下げ、紅龍の兵士は捧げ剣の敬礼をする。

その中を歩いて来たのは、白銀のマントに面をつけた

銀の龍達で、その龍達の後ろに紅龍の兵士に担がれた

輿が来た。その後ろを紅龍の兵士が続き、

エドワード・メリッサ・テリオが続いた。



輿が下ろされ古のしきたりどおり薄い布をかぶった慧を

銀の龍達が跪いて迎え、慧が通り過ぎるとその後ろに従った。

当主の前に進むとリュークが口を開いた。

「遠きところ、よくぞ来られた。カイ殿。

 使用人の数を答えよ。」

すると、ファルが進み出て恭しく礼をすると

「蒼の当主殿でございますね。私は蒼龍とは言えど

 龍王の理を外れた龍でございます。

 ここに居る龍は全て同じでございます。」

「龍王の理を外れた龍と言われると

 その前で段にあがっているのは失礼というもの。

 段を降りようではないか。」

リンエイが重々しく言い、高い場所から降りると

他の当主も続く。



当主達が前に来ると、ファルが続けて言った。

「我々は、カイ様の銀の龍・・・そして、

 この者達は銀の龍の眷龍でございます。

 そして、あの人達は、カイ様の使用人ではなく

 自らカイ様に仕えると誓いを立てた者。

 なので、カイ様の使用人はおりません。」

「おお・・・それは失礼した。

 この者達、全てを客として我々はもてなそう。

 カイ殿・・・この城での幸運を祈る。」

当主達は、友愛の礼を慧にして席に戻った。

それから慧は呆然としている花嫁候補達の

隣席に案内され、歓迎の儀がとりおこなわれた。





「くやしい・・・何で・・・私が一番良い部屋でない!!」

部屋に案内されたロゼが近くにあった花瓶を投げつけた。

「ロゼ様・・・。」

使用人がおどおどとロゼの機嫌を取る。

「お父様に連絡して・・・あの忌まわしい龍人をなんとかしてもらって。」

ロゼはそう言いながらどかっと椅子に座って怒鳴った。

「このグズ!!早くワインでも持ってきて!!」

使用人はか弱く返事をすると扉を開けて出て行った。





「メリッサ・・何か掛けるものない?」

ルイが部屋に入ってきたメリッサに言った。

メリッサはブランケットを持ってソファのそばに行くと

ファルの膝枕で慧がスヤスヤ眠っていた。



「まあ・・可愛らしい・・・。」

可愛らしいという年齢はとうに越したはずなのに

そこらへんの女より華奢な慧の寝顔はまだ幼い少年のようだ。

「疲れたのですね。眷龍が勢揃いしていて驚いてましたしね。」

優しくニコライが言った。



慧の周りを銀の龍達が囲んで見守っている。

その眼差しはとても優しくて、温かく

銀の龍達が慧をとても大切にしていることが

メリッサにも伝わってきた。



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