眠る君へ捧げる調べ

       第10章 君ノ眠ル地ナバラーン〜王宮編〜-11-

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「カイ・・様?」キースが驚いたように言うと

少年はにやっと微笑んで小さく呪文を唱えた。

すると、背が少し伸び、髪と目も黒くなった。



「な・・・ななな・・ぜ?」ユーリが言うと慧が笑いながら言った。

「もちろん、城を抜け出して来たんだ。」

「城の強固な結界が張られているはずだし、周りは堀になっているのに?」

「うん。今日は抜けるつもりじゃないんだけど泳いで来ちゃった♪」



「泳いで・・って・・・。」エドワードは疲れたように言った。

「城の堀って、深くて泳げないばかりかリュージェン(獰猛な肉食魚)がいるはずだが。」

ユーリが言うとキースも言葉を続けた。

「そればかりか、ほとんど垂直の堀どうやって?

 それに闇龍の強い結界がかかっているはずだけど・・・。」

「まあ、細かなことを気にしない。

 城にいると、なかなかゆっくりと話せないしね。」



「なぜと聞いてよいですか?」ユーリが口を開いた。

「いやあ、かなり探りいれられてるし

 盗聴もされているからねぇ。」

「盗聴って・・・どういうことですか?」

エドワードが言った。

「うん・・・闇龍の呪術もかかっていたし

 他にもいろいろとね・・・。

 まあ、あまりひどいのは解除しているけど

 あまり完璧にするといろいろとめんどくさいし・・・ね。

 それに間諜もいるしね。」



「間諜?まさか・・・。」

ユーリが驚いたように言った。

「残念ながら、ロウェルはあちら側だね。」

慧が言うとキースが「嘘!!」と言った。

「いや・・・本当だよ。

 昨日の朝、サイシュンが真実の目を使ったんだ。」

真実の目・・それは、無になることで相手が本当のことを言っているのか

見極める術で白龍の秘術とされる術である。



「待て・・・。秘術を使える龍はかなりの高位龍じゃないのか?」

ユーリが驚いたように言った。

「うん。サイシュンもアルもリーだよ。」

「「「リー!!」」」

ユーリ、キース、エドワードの声が重なった。


慧はコクリと頷いた。

「リーと言えば、龍の当主の次の位の地位。

 なんで、一緒にいるの?」

「うんキース、確かに高位だけど、サイシュンもアルも

 私の銀の龍だもん。」

「銀の龍って、結婚してからなる龍だろう?」

「ううん。だって、私金の龍人だもん。」

慧はきょとんとした顔で言った。




「「き・・・・き・・・金の・・・?」」

ユーリとキースは口をパクパクして茫然と慧を見つめた。

「ありゃ、エドワード言ってなかったの?」

「ええ。これから話そうかと思っていたところだったので。」

「そっか・・そんなわけで、よろしく!!ユーリ。キース。」

慧はにこにこして勝手にユーリの手を握りブンブン振った。






いまだ、頭の中を整理しているユーリとキースを前に

慧とエドワードとテリオは仲良くお茶を飲みはじめた。

「ところで、今日はどのような件で街にいらしゃったんですか?」

エドワードが聞くと慧は紅茶を飲みながら言った。

「一昨日、エドワードにああ言ったけれど、

 エドワードは責任感が強いから私のことを言うことは

 すごく迷うと思ったんだ。

 それに、ユーリやキースにいろいろと頼みたいこともあったしね。」



「頼みたいこと・・・ですか?」

考え込んでいたユーリが口を開いた。



「まずは、街の有力者で貴族に興味のない者との

 パイプ役をしてほしい。

 これは、嫡男のユーリよりキースにお願いしたい。」

キースは「わかりました。」と頷いた。



「そして、ユーリ。

 この屋敷にサイシュンとアル以外の銀の龍を

 住まわせてほしい。」


「えっ・・・龍を?

 人の住居地区へ?」

「うん・・・難しいことはわかっているけれど

 お願いしたいんだ。

 私はね、決して龍は怖い種族じゃないと知ってもらいたいんだ。

 だから、龍と人が共存できることはとても大切なことだと思うんだ。」



そう語る慧を見てユーリとキースは

この人なら本当にナバラーンを良い方向に変えてくれるだろうと思わずにはいられなかった。



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