眠る君へ捧げる調べ

       第1章 君ヲアイシタ記憶(現世編)−6−

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それから、1月がたち、外は新緑の時季になった。

慧がいつものように夕食を作っていると

チャイムが鳴った。


インターホンで見ると整った男の人でどうやら龍星の担当者らしい。

慧は玄関を開け、書斎にいる龍星を呼んだ。


「久しぶりですね。樹。」

龍星はリビングのソファにかけた担当者に声をかけた。

「龍星さん、久しぶりだな。」

「おかしいですね。原稿はメールで送っていますが・・。」

「仮にも俺は担当者だ。たまには顔を見せないとだめだろう。」

そう言って目線はアイスコーヒーをテーブルに置く慧を追っている。



「ああ。慧。紹介いたしますね。こちらは佐藤樹。私の担当の方で

 友人ですよ。樹、こちらが佐伯慧。私の大切な人です。

 この意味わかりますよね?」

その紹介で慧は真っ赤になる。

「ほうーー。」樹は目を細めて慧を見た。

龍星はクスクス笑いながら、慧の頬にキスの雨を降らす。


「可愛いな。」樹はそう言いながら慧の前に跪いた。

「こんにちは。慧ちゃん。俺のことはいつきって呼んでくれ。」

そう言いながら慧の頭をガシガシ撫でる。


慧は真っ赤な顔でペコリと頭を下げるとキッチンに急いで戻った。

「可愛いですね・・。」樹はキッチンの方に目を見ながら言った。

「ああ。愛しいよ。」


「つまりそういうことですか?」樹は真面目な顔をして言った。

口調も変わっている。

「あの子は、特別な子だ。そう感じたからだ。」龍星は目を細めながら言った。

「特別な子?」

「ああ。あの子は優しくてそして芯が強い。」

「俺は、確かめさせてもらいますよ。そして、自分の役割を全うします。」


「ああ・・・。存分に確かめるが良い。」

「あれを元は欲しますかね?」

「ああ・・慧は私の最後の宝だ。私は彼で彼は私だ。

そして・・・さすがに心が痛むよ。

私にもこのような感情があったのだな。」

龍星はそう言って苦笑を浮かべた。




「でも、芯が強い子なのだろう。」

「ああ。そばにいてやってくれ。たぶん・・明日。」

龍星はそう言って目を閉じた。

「承りました。それでは、明朝また来ます。」樹はそう言って玄関に行こうとした。




「あの〜。」後ろから小さな声が聞こえて樹は振り返る。

慧が樹の後を追いかけて来た。

「どうした?慧ちゃん」樹はにこやかに慧に言った。

「夕食、食べていってください。龍星さんと会うの久しぶりなんでしょう?」

「夕食・・?」驚いたように樹が言った。

「たいしたものではないけど、たくさんで食べた方が楽しいから。ねぇ。いいでしょう?」

慧がにっこり微笑んで言った。



何事かと顔を出した龍星が笑顔で樹に言った。

「樹、そうしたら良い。慧のご飯はうまいぞ。」

樹は、ダイニングテーブルに並んだご飯を見ながら驚いた顔をした。

美しく盛られた、煮物、煮魚、絶妙に漬けられた漬物。季節の果物がテーブルの上に並んでいた。


「これ?慧ちゃんが・・・」

慧は小さく頷いてご飯を茶碗によそって樹に差し出す。

慧の作ったご飯はとても美味しかった。

しかも味付けがどれも龍星好みになっている。

「慧ちゃん・・この味付けは元から?」

慧は首を振って言った。

「ううん。龍星さんが食べるのをみていてたら自然とこうなったよ。」

基本的に龍星は何でも食べる。


それでも、美味しいと口を開くのはわりと薄い味付けが多かった。

だから慧は少しずつ味付けを変えていったのだ。

「惚れられていますね。」

慧が食後のコーヒーを淹れに台所に立つと樹が龍星にそう言った。



「気に入りましたよ。」樹はそう龍星に囁くと龍星は黙って頷いた。

樹は、コーヒーをのんで帰っていった。




「龍星さん・・・。」

慧は、風呂あがり龍星の寝室に入っていくと、龍星はベッドに座っていた。

「こっちにおいで。」龍星は慧をいそっと抱き寄せ、キスをする。

「あ・・・・ん。」キスだけで慧の口から厭らしい声が漏れる。

「可愛いね・・慧・・・今日はいっぱい可愛がってあげるよ・・・。」

「龍星さん・・・。」

龍星はそのまま慧をベッドに押し倒した。





その夜の龍星は凄く激しかった。

慧が「お願い・・・助けて・・・。」と言いながら意識を飛ばすまで

何度も抱いた。

慧が意識を飛ばした後、龍星は丁寧に慧の体を清め

何度も体にキスを降らした。



「すまない・・慧・・・。そして・・・待っている・・・。」

そんな声が闇夜にとけた。



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