(※注 暴力的・性的な表現があります。)
真実はベッドに横になりながら天井を見ていた。
外からは雨の音が聞こえる。
あの日の事が思い出される。
「祐樹・・・。」
この1年忘れようともがいても忘れられない記憶。
真実は両手を口にあて泣き声が外に漏れないようにした。
暗い闇・・・。
手から傘が落ちたのまで覚えている。
誰かに押さえつけられて目を覚ました真実は、
痛さで目を覚ました。
「う・・・・っ。」
「気持ちいいぜ。すげぇ・・締め付けてる。」
男のものが自分の尻を犯していた。
「あ・・・・・っ・・や・・やめて〜〜。」
「けっ。気がついたぜ、よーく見ると女みたいな顔してるな。」
別の男の声が聞こえ体が押さえつけられた。
しかし、目隠しをされていて真実を覆っているのは暗い闇だ。
中に入っている男が腰を動かす。
「やめろ・・・・」
気が遠くなった。
正直、自分がどのくらいあそこにいたのかわからない。
覚えているのは、体を重ねる男達。
そして、その中には忘れられない声もあった。
「真実・・浮気していた代償だ・・。」
「東条・・せ・・・ん・・ぱ・・・。」
「他の男に渡すなら、俺が壊してやる。あはははははっ。」
「ほんと、いいざま。」女の笑い声と強い香水の香りがする。
「私に恥をかかせたのよ・・・。」
いきなり顔に激痛がはしった。
たぶん顔を蹴られたのだ。その声は東条円の声だった。
助けられた時のことはあまり覚えていない。
気がついたのは、誰かの声。
「真実・・・・。」
この声・・どこかで聞いたことがある。
「ゆ・・・き・・・。」
白い光りが目に入った。目を開けると白い病室。
「真実・・良かった・・気がついたのか・・。すまない。真実・・・。」
目をあげると、岡島がいた。
いつもの無精ひげ・・・・そして。
岡島はメガネをしていなかった。
そこにあったのはバーで知り合って惹かれていた
祐樹の強い眼差し。
「そっか・・・。」
真実はそのまま微笑んだ。
岡島が祐樹で良かったと思った。
「祐樹・・・眠ってもいいかな・・・。」
「ああ・・・真実・・ゆっくり眠って。俺ここにいるから・・・。」
手を握られたのがわかった。
「真実・・?」低くて大好きな声がする。
「ゆ・・・祐樹?帰って来たの?」
驚いたように真実は半分起きあがりながら言った。
目の前には相変わらず無精ひげ、でも、メガネははずされている。
「真実が寂しがっていると思って帰ってきたよ。」
そう言いながら祐樹は真実の顔にキスの雨を降らす。
あの事件が真実にもたらした傷はとても大きなものだった。
一番大変だったのが人がそばにいるのに不安を覚えるようになった。
それが原因で仕事にも集中できなくなり、会社を辞めることにした。
精神的にも不安定な毎日が続いたので有名なセラピストの元に通うことにした。
そして、どんな時もそばにいて支えてくれたのが祐樹だ。
1人でいるのに不安を覚える真実を自分のアパートに連れてきて、
ちょっとしたことで体調を崩す真実の看病を献身的にしてくれた。
半年を過ぎた頃にはもう二人は離れられない存在になった。
そして、事件から10ヶ月目、真実は祐樹に抱いてほしいと頼んだ。
祐樹は、すごく優しく真実は何度のぼりつめ、歓喜の涙が溢れた。
そして、一週間前のあの事件の日、祐樹は養子縁組の書類を持ってきて
真実にプロポーズしてくれた。
「一生一緒に生きていこう。」その言葉に真実は涙をこぼしながら頷いた。
でも、まだその書類は役所に届けられていない。
「祐樹、俺またきちんと働いて祐樹と同じ土俵に立ちたい。
ちゃんと対等になってからこれだしていいかな?」
そう真実が言うと祐樹は微笑んで頷いてくれた。
「祐樹・・あんまり俺を甘やかしたらだめだよ。」
抱かれた心地よい疲れの中真実が言う。
「あいにく、甘えさせる人は真実しかいないからな。」
祐樹はそう言いながらキスの雨を降らした。
「祐樹・・だめだってば・・・。」
甘い言葉が部屋に響いた。
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