君と僕らの三重奏 番外編 

〜永久に伴に・・・〜 −4−

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「慎吾?何かあったか?」

心配そうに言ったのは、1歳年上の修吾だ。

慎吾と修吾は年子なので、双子かというほどいつも一緒だ。

だから、修吾は一番慎吾の変化に気づいていた。

留学から戻ってきた慎吾は、以前以上に勉強をするようになった。

家庭教師を頼んで、外国語も勉強している。

それは、以前と違って何かの目的に向っているように思う。

「シュウ兄・・・。」慎吾は勉強机から目をあげて修吾を見た。

「どうした?私はいつも慎吾の味方だろ?話せよ。」

修吾はそう言って窓枠に凭れ掛かった。

「シュウ兄、俺が言うこと信じられないかもしれない。」慎吾はそう言った。

「信じられないかもしれないけど、それも慎吾なんだろう?言えよ。

 ああ、秘密は守るから。」

慎吾は、修吾だけには真実を語りたかった。

「シュウ兄、俺アメリカで恋に落ちた。一生そばにいたい人を見つけた。」

「なんだ?お前にも恋人ができたのか?良いことじゃないか?」

慎吾は首を振りながら言った。

「父様は許してくれないと思うよ。だって、俺が好きになった相手は・・・。」

慎吾はここで息を吸い込んだ。

「男なんだ。」

修吾は穏やかな目で慎吾を見ていただけだった。

「そうか・・・辛かったな。慎吾。よく1人で決めたな。」



慎吾は修吾がそう言うと思わなかった。修吾は、慎吾の近くに来て黙って慎吾の頭を撫でた。

慎吾の目から涙が溢れた。

「本当に昔からお前は泣き虫だな。」修吾は静かにそう言った。

「シュウ兄・・・軽蔑しないの?」

「あ〜〜?なんで軽蔑しなければならないんだ。」

「だって、父様は・・。」

「間違いなく勘当だろうな。でもお前は覚悟しているんだろう?」

慎吾は黙って頷いた。

「それで、お前は何でそんなに勉強しているんだ?」

「とにかく、十八歳まで、あいつと一緒に歩けるくらいになりたい。」

「そんなにすごい人なんだ。」

「ああ。すごい人だよ。俺はまず投資を勉強して自分の分くらいは稼ぎたいんだ。」

「投資って?」

「昔から、お年玉とかバイト代とか貯めているのを元手に投資をして

 十八歳くらいまでには1人で暮らすくらいになりたい。

 もちろん、元手はきっちり返すつもりだ。」

「投資ねぇ・・。わかった。慎吾。私も勉強につきあってやる。」

慎吾は驚いたように修吾を見つめた。

「いや・・私も片思いだけど、愛しいと思う相手はバリバリ男だから・・。」

修吾は照れたように言った。



慎吾と修吾は、黙って拳と拳を合わせる。

これが、2人で昔からしていたエール。


投資のことを親に知られたくない2人は、修吾が身分を明かさないでバイトをしていた先の

東条隆道に相談して、投資を始めた。

そして、海の向こうでは、キースも投資を始め収入の基礎固めを始めたようだった。

慎吾は修吾と共同で、アパートを借り、そこにパソコンを設置してキースと連絡を取った。

キースは、慎吾の希望を聞きながら慎吾の勉強のプログラムをたて、修吾もそれにつき合った。

1年後には、慎吾と修吾は元手を返し、尚も利益をあげるほどになった。

そして、キースから送られてくる難しい大学生用の勉強も始めた。

夏は海外の別荘に行くといいながら、慎吾はキースの家に缶詰になり

やはり勉学に励んだ。


修吾は、ヨーロッパの建築に興味を覚えたようで

イギリスの大学にいくことにしたようだった。

慎吾は、修吾の想い人の東条隆道が結婚したからイギリスに行ったのを知っていた。



いつも一緒にいた修吾がいないことはとても寂しかったが、

修吾からは毎日慎吾にメールが来たし、キースも慎吾を励ましてくれたので

慎吾は信じられないくらい勉強をして、最後には学年首席になった。

もちろん、元からガリ勉タイプではなかったので、高校でも友達に囲まれ

結構充実した高校生活を送ることができた。

以前から、アメリカに留学することを両親に言っていたので両親も進学について何も言わなかった。

卒業の日が近くなると、修吾がひょっこり家に帰って来た。

そして、慎吾は高校卒業の日を迎えた。


 
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