君と僕らの三重奏 番外編 

〜永久に伴に・・・〜 −5−

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高校卒業の日。家に帰ると、両親と兄弟が皆部屋にいた。

兄弟でも、首席卒業は慎吾が初めてだったので、

父親と二十四歳になる長兄は機嫌が良かった。

しかし、慎吾は覚悟を決めていた。



慎吾が正直にキースとの関係を告白し、家を出ていくことを話すと

父に怒られ、長兄に叩かれ、頭を冷やすように蔵に入れられた。

どんなに扉を叩いても誰も開けてくれなかったが、



真夜中に静かに扉が開くとそこには懐中電灯を持った修吾がいた。

「修吾?帰ったのではないの?」慎吾は驚いて言った。

慎吾が学校から帰ってくるとすぐに修吾はイギリスに帰ると家をでたから

ここにいるのが信じられなかった。

「慎吾、いつでも俺はお前の味方だから。」

修吾はそう言うと慎吾に紙袋を渡した。


それには、スーツ一式と暖かそうな上質なコートと下着一式が入っていた。

「佐々木の家の物は全部置いていけ。」修吾はそう言った。

慎吾は、涙を流しながら服を着替えて、修吾と一緒にセキュリティをかいくぐって

裏からひっそりと出た。

修吾がとめていたレンタカーを出し、成田空港に向った。

修吾は、車の中でサンフランシスコ行きのファーストクラスの航空券を慎吾に差し出した。



そして、空港に行くと二人は一緒に出発ロビーのベンチに座った。

修吾はここで口を開いた。

「恐らく、父様は俺を疑う。だから、きっとしばらくは会えない。

 俺は、お前のためにも佐々木に残ろうと思うよ。」

「ありがとう。修吾・・。」慎吾はそう言った。

実際修吾がいなかったら自分はどうなっていたのかわからなかった。

「お前は、まっすぐ歩けばいい。幸せになりな。」

修吾はそう言って黙って拳を突き出した。慎吾は泣きながら拳を合わせた。

そして、2人はそこで別れた。

2人とも、顔をグチャグチャにして泣いていた。


朝の空港に静かに飛行機が停まる。

キースは到着ロビーで愛しい人の姿を探した。

向こうにスーツ姿の慎吾が現れた。

去年の夏に比べると、背も伸びて男らしくなっている。

目は泣いたためか真っ赤に腫らしていた。

慎吾は、キースの姿を見ると、ポロポロ涙を零しながらキースに抱きついた。

「まさか、キースが来るとは思わなかった・・・。」

泣いて言う慎吾にキースは微笑みながら言った。

「おかしいね。慎吾がこの便で来るって私にメールくれたじゃない?」

慎吾は空を見て「修吾だ。」と言った。

キースは慎吾の腰に手を回して、飛行場の出発ロビーに歩いていった。

「どこにいくの?」慎吾が小さな声で聞くとキースが笑って言った。

「どこでも、いいだろう?慎吾。ずっと一緒だろう?」

慎吾はキースを見て微笑んだ。

「ああ。キースと一緒ならどこでもいい。」

そう言ってキースの頬にキスをした。


 
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