君と僕らの三重奏

       第9章 血の繋がり −9−

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次の日、樹珠愛はジーンの見送りに空港まで行った。

樹珠愛の隣には和道と西條が立っている。


まず、ジーンは和道に手を差し出して言った。

「和道様、お世話になりました。ロンドンに来たら

 今度は私の店のカフェにいらしてください。

 それから、隆道様にお世話になりましたとお礼を伝えてください。」


ジーンは、昨日隆道と修吾に勧められて、東条の本家に泊まったのだ。

昨夜は、義道と隆道が翠のアルバムを出してきて

ジーンを交えて、樹珠愛の両親の話をした。



和道は御曹司らしい柔らかな微笑を湛え、

「わかりました。父にはそのように伝えておきます。

 ロンドンに行くのを楽しみにしております。」

と言ってジーンの手をぎゅっと握った。


次にジーンは西條に「これから、何かとよろしくお願い致します。」

と深々とお辞儀をした。

西條は小さく頷き、「ロンドンでお会いできるのを楽しみにしております。」

とありきたりの挨拶をした。


最後にジーンは樹珠愛の方に向いて言った。

「樹珠愛様、何かと迷惑をおかけして申し訳ありません。」

「ジーン、それはもう言わない約束をしたでしょう?」

樹珠愛は微笑んで言った。


「そうですね。」

ジーンは、そう言いながら微笑んだ。

「ジーン、これをエドワード様に。」

樹珠愛はバックから手紙を取ってジーンに差し出した。


「承りました。樹珠愛様のお帰りお待ちしております。」

ジーンは恭しく礼をすると、和道と西條にもう一度お礼を言って

ゲートをくぐった。



「ジーン。」

樹珠愛が大声でジーンの名を呼ぶと、ジーンは不思議そうに振り返った。

「エドワード様に貴方がいてくれて凄く嬉しい。

 会えるのを楽しみにしている。と伝えて下さい。」

樹珠愛がそう言うと、ジーンが大きく頷いて言った。


「私も貴女が生きていて、こうして再び会えたことを嬉しく思います。

 向こうでお待ちしております。」

樹珠愛は、涙をポロポロ流しながら何度も頷いて手を振った。


西條が優しく樹珠愛の肩を抱いて、和道がポケットからハンカチを出して

樹珠愛の涙を拭いてやった。

その様子をジーンは微笑みながら見て大きく手を振るとゲートの向こうに消えた。



和道が樹珠愛の手を握って言った。

「樹珠愛の家はあのマンションだろう。

 さあ、帰ろう!!」

樹珠愛はにっこりと笑って見せて和道の手を握り返した。






次の日、会社に出勤した西條は隆道に呼ばれた。

「樹珠愛は、大丈夫?」

隆道が心配そうに聞いた。


「昨夜は良くおやすみになられていました。」

西條がそう言うと隆道は安心したように溜息をついて言った。


「西條、樹珠愛は1人でずっと生きてきた子だから

 こちらで気をつけてあげないと耐えてしまうと思うの。

 だから、今まで以上に気をつけてあげてね。」

「わかりました。」


「エリザベス・マクスウェルはかなりな悪女だから

 念の為に樹珠愛や和道にはボディーガードをつけるように手配してもらえる?

 ボディーガードと言っても2人には気づかれないように

 ガードしてもらえる腕利きをお願い。」

「かしこまりました。」


「それと、マクスウェル社の株なるべく押さえておいて。

 まあ、旨みはあまりない会社だけど、ジーンに任せたとしたら

 なかなか面白いことになると思うわ。

 西條、ひょっとしてもう手は回している?」


「はい。樹珠愛様が手術を引き受けた日に手は回しております。

 たぶん、樹珠愛様自身も株はお持ちだと思いますが・・。」

「あの子なら結構持っていると思うわ。

 できるだけ目立たないように。

 何だったら個人名義を分けても良いから手配お願い。」


「かしこまりました。」

西條はそう言って社長室を出て行った。



「さて。」

机に向って仕事をし始める隆道の顔はビジネス用の

厳しい経営者の顔になっていた。



 
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