君と僕らの三重奏

       第8章 家族の温もり −6−

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修吾は、樹珠愛の顔を見て言った。

「樹珠愛、聞きたいことがある。

 慎吾は、佐々木の家族を憎んでいたかな?」

樹珠愛は、ゆっくり首を振って言った。

「確かにそんな時期もあったと言ってたけれど

 私を育ててからはそんな気も薄れたって言っていたわ。

 慎吾から聞いたのはいつも楽しい家族の思い出話だったわ。

 よく羨ましがってキースと慎吾を困らせてしまったの。」


「あら、何て困らせたの?」隆道が聞く。

「私も兄弟が欲しいって。」

「そりゃ、さすがのキースさんも困ったよね。」

和道が笑いながら言った。




「慎吾の事を母には教えたいと思うんだ。

 私と母は定期的に会っているんだけど

 どうしても切り出せなくてね。

 それで、今度この着物を着て一緒に来てほしい。

 慎吾の話をいっぱい母にして欲しいんだ。」

「修吾パパ、でも 悲しまれないかしら。」

「それでも、真実は知るべきだと思う。」

「わかったわ。」

樹珠愛はそう言いながらせつなそうに微笑んだ。



これから、寝ようという事になって樹珠愛が急に

とんでもないことを言い始めた。

「こんなに大きな大広間があるんだから皆で寝たい!!」


「よしっ!!すぐに言って床を用意させよう。」

樹珠愛にメチャクチャ甘い義道がそう言ったので、

皆は一旦自室に戻ってパジャマを着てくることになった。

初めは遠慮していた西條も義道の鶴の一声?で一緒に寝ることになった。


「樹珠愛、可愛いパジャマあるのよ。絶対着てね!」

隆道はそう言って紙袋を樹珠愛に押し付けた。



数分後、義道は浴衣姿、その他はパジャマ姿で

再び大広間に集まった。

大広間には仲良く6人分の布団が敷かれていた。



「親父のパジャマ凄いな・・・。そんな紫初めて見た。」

和道が隆道のサテンの紫色のパジャマを見て

ポツリと言うと隆道がウィンクしながら言った。

「いやね・・和君・・・紫じゃなくてパープルと言うの。

 本当、親父くさいんだから。」

和道は疲れたように溜息をついた。



「隆道パパ、このパジャマ恥ずかしい。」

樹珠愛がそう言いながらピンクの

フリフリのレースがついた乙女チックな

パジャマを着て現れた。



「まあ!!可愛い。やっぱり女の子はいいわねえ。」

隆道が言うと、

「樹珠愛様、とてもお似合いですよ。」

西條も微笑みながらそう言った。


和道がいそいそと携帯を取り出して

「写メしようぜ。」と樹珠愛の肩を抱いてパチリと写真を写した。

「ちょっと待って!!私も撮る!」

隆道はそう言いながら携帯を取り出し樹珠愛と写真を撮る。

結局義道まで、携帯を取り出す事態になり、

皆がわいわいやっている横で樹珠愛は、眠そうにしていた。



「樹珠愛、もう休んだ方が良い。」

和道は樹珠愛を布団に寝かせて布団を掛けてやると

樹珠愛はスースー寝息をたてはじめた。



皆は顔を見合わせて樹珠愛が起きないように静かに布団に入った。

「まさか、親父と同じ部屋で休むことになるとは思わなかった。」

和道が天井を見て言うと、隆道も小さく笑いながら言った。

「和君、そう言う私も父様と一緒に休むのは初めてよ。」

義道が「そうだったかな。」と呟いた。



「樹珠愛は、不思議な子だね。この子が我々に温もりを持って来てくれたように思うよ。」

修吾がそう言った。


バラバラな家族だった。

親子と言っても他人のようなよそよそしい関係だった。

「何だか、私達も樹珠愛様にプレゼントを戴いたみたいですね。」

西條の言葉に皆が頷いた。



「だからこそ、樹珠愛には幸せになって貰いたいのぅ。」

義道がそう漏らした。

樹珠愛自身も、イギリスのマクスウェル家との問題を解決しなければ

ならない。

キースと慎吾がいくら養女として秘密裏に国籍を作ったとしても

このままではいけないと皆が思っていた。



「どんな時も、樹珠愛の傍にいてあげましょう。

 それが家族でしょう?

 それに、今までそれぞれ活動してもそれなりに成功させていたのだから

 ここにいる皆が集まれば鉄壁だわ。」

隆道のその言葉に頷きながらも、皆が樹珠愛を護る決意を心の中で

改めて確認したのだった。




 
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