君と僕らの三重奏

       第8章 家族の温もり −5−

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岡島と川島にお礼を言って部屋を出た樹珠愛を

和道がもう1つのドアの方へ案内した。

このマンションのドアは、顔認証と指紋によるセキュリティを取っているので

登録した人しかドアが開かない仕組みになっている。と西條が説明をしてくれた。



そのドアを開けると長い廊下があり

その廊下沿いに何部屋かの部屋が並んでいる。


「ここはフィリップさんの協力を得て作ったんだ。

 面倒な手続きも全てフィリップさんがやってくれたんだ。」

和道はそう言いながらその中の真ん中のドアを開けた。

「えっ。これって?」樹珠愛は驚いたように中を見た。


そこは、病院の診察室のようなつくりで、その右隣りには

広い検査室と最新の医療機器がある部屋があった。


どの部屋も広い棚には必要な薬品や器具が揃っているようだ。

特に検査室は樹珠愛の研究室も兼ねているつくりになっており

様々な機械や設備が所狭しと置かれていた。


診察室の左側には病室が2室ありその奥に寝台用のエレベーターがあった。

そのエレベーターは地下1階から地下3階までのボタンがついていた。


「ここのエリアは、東条病院で極秘に手術したり処置したりしたい患者さんが

 いる場合、ここで対処するという条件の基に作られたのですよ。」

西條が地下3階のボタンを押してそう言った。


その言葉通り、地下3階には手術室、X線やMRIなどの施設と病室があった。



そこを全て見た後、3人は部屋で着替えてから本家に向かった。

本家の玄関はいつもよりひっそりとしていて暗かった。

「あれ?皆出かけているのかしら?」

もう7時くらいになっていたのでいつもなら、修吾あたりがいるのにと

樹珠愛は不思議そうに首を傾げた。


そのまま和道と居間の方に歩いて行くと、和道が微笑みながら樹珠愛に言った。

「樹珠愛、ドアを開けてごらん。」

樹珠愛がドアを開けると、「ハッピーバースデイ!!」と言う声とともに

部屋が急に明るくなった。



「えっ!!何?」

まだ、目が明るさに慣れていない樹珠愛はまばたきをしながら部屋の中を見回した。

そこには、東条義道・隆道・修吾、フィリップ・マリア夫妻、

真崎栞、橘晃の姿もある。



「ほら、そんなとこに突っ立ってないで、こっち来なさいよ。

 和君、ほらエスコート。エスコート。」

隆道がそう言うと、和道が微笑みながら樹珠愛の手を

恭しく持ち、大きなケーキの前に連れて行った。

「うわあ。すごいケーキ。」

樹珠愛がケーキの前でそう言うと、灯りが消えた。


「ほら、樹珠愛。」

フィリップがデジカメを構えながら言った。

樹珠愛は、大きく息を吸い込むと16本のロウソクを一気に消すと

灯りがつき、皆が「おめでとう!!」と言って拍手した。



樹珠愛は涙をボロボロ流しながら「ありがとう。」と言うと

皆が笑いながら樹珠愛の肩を抱いたり、ハンカチを差し出したり

頭を撫でたりした。

その夜は、笑い声が溢れたとても楽しい夜になった。



帰りがけに栞とフィリップは樹珠愛にプレゼントを渡して帰っていった。


本家に泊まることになった樹珠愛は

居間に戻り、ソファに座るとプレゼントを開けることにした。


まず手にしている栞のプレゼントを開けると、美しいグリーンガーネットのネックレスと

お揃いのブレスレットだった。

カードには、「晃と一緒にデザインして作ったものです。16歳の毎日が樹珠愛の宝物になりますように。」

と書かれていた。



フィリップのプレゼントを見た樹珠愛はぷっと笑った。

それは携帯用の医療器具だった。

カードには「自分の為に使うことのないように。誕生日、おめでとう。」と書かれていた。


それから、樹珠愛は昼に紅子から渡された上村からのプレゼントを開けることにした。

「わあ、すごーい。」

中には、特注で作ったらしい武器が入っていた。

7節に分かれた部分を繋ぎあわすと棒になり、上の蓋を開けると

鋭い槍になる。


「これは、凄いですね。」武道に精通した西條もそう漏らした。

樹珠愛がプレゼントをしまっていると、大きな箱を持った

修吾が入って来た。



 
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