君と僕らの三重奏

       第8章 家族の温もり −3−

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「樹珠愛。」

車が泊まると、和道が中から姿を現した。

「和道?どうしたの?」

不思議そうに樹珠愛が聞くと和道は微笑みながら言った。

「まあ、中に入ろう。」

和道はそう言いながら、樹珠愛の手をひいてマンションの中に入り、

エレベータに乗り、最上階に降りる。


「何?ここ、ペントハウス?」

樹珠愛は不思議そうに言った。


和道はそのドアを開けて恭しく礼をして言った。

「樹珠愛、ようこそ。新しい我が家へ。」

「えっ。」

樹珠愛は驚いたように目を見開いた。



「このマンションは、義道様、隆道様、修吾様、和道様と私からの

 誕生日のプレゼントですよ。さあ、お部屋を見て回りましょう。」


西條の案内で樹珠愛は新しいマンションの部屋を見て歩いた。

全体的に以前住んでいたマンションに比べて広くゆったりとした設計になっている。



リビングには、新たに茶色のグランドピアノが入れられていた。

「ベーゼンドルファー?」

「ええ、このピアノはクレール総帥から送られてきたものです。

 これは、カードです。」

樹珠愛がカードを開けるとそこには


『誕生日おめでとう。樹珠愛。

 君は、まだ16歳になったばかりなんだね。

 だからこそ、16歳にしかできないことを沢山しなさい。

 君に、薔薇色の毎日が続きますように。

 渡せなかった3年分のプレゼントです。

 日本に行ったら素晴らしい音色をきかせてください。

 フランスでの君の父 ピエール・J・クレール。』

と書かれていた。


「後でお礼の手紙書かなきゃ。」

樹珠愛はそう言って嬉しそうに微笑んだ。



新しいマンションは、ルーフバルコニーが2つもついていて、

3人で利用できる大きな書斎もある。


それぞれの部屋の窓も大きく取られているので

日当たりも良い。

まるで、3人で暮らす為に建てられたような作りに驚いていると

西條が微笑みながら教えてくれた。


「このマンションは、東条コンツェルンの得意先で業務不振に陥っていた企業が

 バブル時に建てた賃貸マンションなのですよ。

 だから間取りもゆったりしてますし、お風呂も豪華なのです。

 我が社でその会社を吸収したので、その時にここの物件も手に入ったのです。

 それから、1月くらいで改装はしたのですがね。」



和道は、穏やかな顔でそう説明する西條の横顔をあきれたように見つめた。

正しくはこのマンションが欲しくて、西條と父、隆道がその会社に揺さぶりをかけ

元々このマンションに住んでいた住人にも立ち退きをさせて

改装に入ったのである。



何も知らない樹珠愛は嬉しそうに説明を聞きながら色々な部屋を見ている。

「ここは、公園の中にあるマンションなので周りは静かですが、

 この公園を抜けると、北側は本社ビルもあるオフィス街、

 このマンションから歩いて5分の所には、栞様のビルもあるショッピング街にでます。

 学校からは少し遠くなりますが、本家までは歩いて15分ほどで着きますよ。」


「えっ。本家にも歩いていけるの?すごい!!

 本社にも歩いていけるし、エステも美容室も歩いていけるんだ。

 と言う事は、スポーツジムも近いよね。」


「ええ。隆道様が言われるには、ちょうど、本家の従業員や私的なSPの社宅に

 していたマンションが老朽化したそうです。だから、この下の3階までは

 それらの方の部屋があります。4階は、本社や樹珠愛様の会社の信頼のおける社員に

 部屋を貸しております。

 ああ、岡島と川島も越して来ましたよ。

 5階と6階は空室ですが、6階の1部屋は隆道様と修吾様が使うそうです。」


「ユウキさんとマサミさんも?

 それは良かった。あの2人、仕事に集中するとほとんど

 会社に缶詰だものね。

 じゃあ、身内だけなんだ。このマンション。

 5階とかは誰か入るの?」

「今のところは予定は無いです。」



「そうなんだ。ありがとう。私ここ気にいったわ。」

樹珠愛がニコニコ笑いながら言うと和道がにやりと笑って言った。


「樹珠愛、まだプレゼントはあるんだよ。ついて来いよ。」





 
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