君と僕らの三重奏

       第7章 君が隠してきたもの −7−

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朝日が暖かく顔を照らす。

樹珠愛はゆっくりと目を覚ました。

寝る前に見た顔全部が見えた。

「おはよう。」樹珠愛はにっこり微笑んで言った。

皆はほっとした顔をして、挨拶を返した。

「おなかすかないないかね?」ギャルソンエプロン姿の修吾が言う。

「そう言えば、すいたわ。」

「朝から、シュウが朝ごはん作ったのよ。」

「修吾パパが?」

皆で、ダイニングに行くと樹珠愛の顔がぱっと明るくなった。

「すごい量だな・・。」和道がつぶやいた。

テーブルのお皿には、ポーチドエッグ、ベーコン、ソーセージ、

ベイクドトマト、マッシュルームのソテー、ベイクドビーンズ

が並び、その横には何種類かのパンが盛りつけてある。

「樹珠愛は、これだろ?」と修吾は樹珠愛のそばにミックスジュースを置いた。

「うわあ。懐かしいなぁ。週末はいつもこれだったんだよ。」樹珠愛は嬉しそうに食べはじめた。



「樹珠愛、慎吾はいないけど、こうしていろんなとこで生きているだろう?

 樹珠愛の作る和食は、俺の実家の味だものな。」

修吾が微笑みながらそう言った。

「そうだね。」樹珠愛もそう言って微笑んだ。




朝食が終わると、樹珠愛は財布から1枚の写真を取り出して修吾に渡した。

修吾はその写真を黙ってじっと見つめた。

「あいつは・・最期まで幸せだったんだな。」

修吾はそう呟いた。

「この写真は、修吾パパが持っていて。」

修吾は驚いたように樹珠愛を見つめた。

「いいのかい?」

樹珠愛は黙って頷いた。

修吾は写真を黙って見ていたが顔をあげて言った。



「樹珠愛、慎吾から聞いたと思うが、慎吾も私も勘当された身だ。

 佐々木の家とは関わりを持たない。

 それでも、私は母とは定期的に会っている。

 今度、一緒に行ってくれないかね?

 慎吾の話を聞かせてくれないか?」

樹珠愛は黙って頷いた。

修吾は、手の中の写真を皆に見せた。



皆がその写真を見て思った。

ああ・・彼らは幸せだったんだと・・・

それは、2人の最期の写真だった。

2人は固く抱き合っていた。

写真はモノクロで、キースの胸の中に抱きしめられた慎吾は

本当に嬉しそうに微笑んでいた。

抱きしめているキースも綺麗に微笑んでいた。

とても美しい写真だった。




 
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