君と僕らの三重奏

       第7章 君が隠してきたもの −1−

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・・・・マンション・・・

「最近樹珠愛の様子おかしいような気がするんだよね。」

和道は、ベッドの中で龍哉に寄りかかりながら言った。

「えっ・・・?どのように?」

「う・・・ん。なんだか溜息が少し多いような気がするし、気を抜いていると

 ぼーっとしている。」

「それは、心配ですね。まあ、肝心の樹珠愛が本家に泊まりに行ってますしね。」

「最近あいつ忙しそうにしているじゃん。

 ゴールデンウィークも香港とアメリカの病院に出かけて手術してきたり・・

 ずっと仕事してたよな。俺には無理に忙しくしているように見えるんだ。」

「確かに、樹珠愛は何かあるとハードワークするタイプですしね。」

「龍哉?慎吾さんの誕生日いつだったけ?」和道が急に何かを思い出したように言った。

「慎吾・・さん?」

「ああ、親父が持っている樹珠愛のアルバムの最後の写真、慎吾さんの誕生日の写真だったろ?

 キースと慎吾さんが亡くなったのは、その数日後だったはずだ。

 今の時間なら、修吾さん起きているだろう。俺電話する。」

和道は、ナイトテーブルから携帯を取り出すと携帯を取る。

「修吾さん・・和道です。あの今よろしいですか?

 樹珠愛のことで気がかりなことがありまして・・・。

 ええ。修吾さんも感じていましたか?

 それで、お聞きしたいのは慎吾さんの誕生日を・・・。

 えっ?7日でしたか?

 あー。やっぱり・・・。たぶん、命日が近いと思いまして・・・

 それだと思います。明日、俺西條と迎えに行きます。

 修吾さん、樹珠愛はまだ、乗り越えていないのですよ。

 それを親父にも・・ええ・・よろしくお願いします。」

和道はそう言ってから電話を切って西條を悲しそうに見た。

「あいつ・・きっと心でいっぱい泣いてるんだろな。

 電話越しに聞こえてきたメンデルスゾーン・・・

 すごく・・悲しい感じだった・・・。龍哉・・龍哉・・・。」

西條は和道をしっかり抱きしめた。

「今夜は激しく抱いてくれ・・俺もおかしくなりそうだ。」

和道はそう言うと西條の唇を激しく吸った。




・・・本家・・・


「電話・・誰だった?」

顔色を変えて電話を切った修吾を見て、隆道が言った。

「和道君だ。樹珠愛の様子がおかしい理由がわかったよ。」

「ええ・・。これは尋常じゃないわ。メンデルスゾーンが泣いているわ。

 恐らく本人は気がついてないと思うけど・・。」

「隆道・・慎吾の誕生日、7日だったんだよ。」修吾がそう言う。

「えっ・・今日は9日でしょ・・・ま・・まさか・・?」

「そう・・たぶん、本当の命日はもう少しだ。」

「まだ、乗り越えてないのね・・。」

修吾は黙って頷く。

「いえ。そんな簡単に乗り越えるほうが普通じゃないわ。」

「タカ・・・切ないな・・。」修吾はポツリと言った。

隆道は、修吾の頭を抱いて言った。

「でも、私達が支えなきゃ。樹珠愛ちゃん一人じゃないって教えてあげなきゃ。」

「そうだな・・。隆道・・すまない少しだけこうしていてくれないか?」

修吾の声も涙声だ。

「そうね・・・シュウに取っても大切な弟だったものね。」

隆道は、立ったまま修吾の頭を撫で続けた。










「樹珠愛、気をつけて行くんだよ。」

「慎吾、大丈夫?」

「ふふふっ。キースに強力な薬調合してもらったから大丈夫だよ。」

「じゃあ、大丈夫だね・・・。帰ってきたらミックスジュース作るね。」

「ああ・・・・それは・・・嬉しいな。」

「暖かくして待っててね。夕食は私作るからね。」

「ああ。樹珠愛はいい女になったな。」

「ふふふっ。慎吾、惚れないでね。」

「はははっ。確かに君は俺が世界中で一番愛してる女だよ。

 ほら、キースが呼んでいるよ。行っておいで。」

「うん。」



「キース・・私も・・。」

「ジュリア・・・私が言ったとおりするんだよ。」

「うっ・・・キ・・キース・・・。」

「ジュリア・・・あ・・・い・・し・・・・」

「待って!!キース・・置いていかないで・・・キ・・・・ス・・・」

ここで、樹珠愛の目の前は急に真っ暗になった。




 
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