君と僕らの三重奏

       第6章 高校入学 −3−

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樹珠愛達が教室に戻ると、担任が来て簡単な説明があった。

しばらくすると、教室に保護者達が入ってくる。

蒼明学園の保護者には2種類ある。

ひとつは、生徒の親というケースでもうひとつは

生徒の親の部下であり側役である。

そして、A組はどうしても側役の保護者が多い。

側役の保護者は、他の保護者を見て自分の主は

どのような人と繋がりをもったら良いのかシュミレーション

する。

そして、彼らもここに東条グループの御曹司東条和道の側役

西條がいるのを見て驚いている。

西條はその視線に気がつかないふりをしている。

側役にとって西條はそこら辺の企業の社長よりも

大きな存在なので声もかけずにいる。

何しろ、東条コンツェルン社長、東条隆道の右腕と言われ、

東条コンツェルンが大きくなったのも西條の手腕が大きいと

噂されている。



担任が保護者に挨拶をして、そこで解散になった。

樹珠愛は嬉しそうに西條の方に行くと

「樹珠愛様、お疲れ様でした。」と西條が柔らかい口調で言った。

普段から鉄仮面と言われている西條の顔が優しくなるのを見た者は

驚いたように目を見張り、西條にとって樹珠愛は和道と同等の存在

かと思ったようだ。


他の側役や保護者も生徒と合流し、帰途につこうとしている。


その時紅子が樹珠愛の方に歩いてきた。

後ろには側役らしい男がついている。

シャープなメガネを掛け、落ち着いた佇まいの30代の男だ。

「樹珠愛様、紹介いたしますわ。彼が私のお目付け役の真田です。

 真田、彼女が今日お友達になった楠瀬樹珠愛様です。」

紅子も学校の雰囲気にあわせてよそ行きの言葉だ。

「初めまして。蓑原の側役の真田と申します。お嬢様がお世話になります。

 ああ、西條様。お久しぶりでございます。」

にこやかな真田に西條も挨拶を返す。

「真田様、ご無沙汰しております。蓑原様、私が樹珠愛様の保護者代理の西條です。

 樹珠愛様の保護者は東条隆道様なので、今日は変わりに私が参りました。

 蓑原様、樹珠愛様のことよろしくお願いいたしますね。

 樹珠愛様はハーフで最近日本にいらしゃったので戸惑いも多いでしょうから。」

紅子は、納得したように頷いた。



その時、教室に和道が入ってきた。

周りの生徒が驚いたように和道を見る。

和道は、優雅に微笑みながら近くに来て、

「樹珠愛、お友達ができそうかい?」と優しく聞いた。


樹珠愛が和道に紅子を紹介すると

「樹珠愛をよろしくおねがいしますよ。それでは、これから予定があるので・・。」

と和道は微笑みさりげなく樹珠愛の腰を抱き、完璧にエスコートをする。

その後ろを西條が守るように歩いていった。


「蓑原?彼女は何者なの?」紅子が樹珠愛達の後ろ姿をみながら聞いた。

「いえ。まだわかりません。帰ってから情報を探します。

 しかし、東条グループの社長が保護者になるくらいの方

 ですから、只者ではないでしょう?」

「真田・・・只者でないのはわかるけど、恐ろしく天然よ。」

紅子はそうつぶやいた。



玄関を出ようとした和道は目の前に停まっている車に唖然とした。

車から降りてきたのは和道の祖父東条義道だ。

「「おじいさま。」」和道と樹珠愛が驚いたように祖父の元に行く。

「樹珠愛、入学おめでとう。」

義道はそう言いながら樹珠愛を抱きしめると、樹珠愛はいつものように

ハグをして義道の頬にキスをした。



学校から、車に気がついたのか理事長と校長も現れ、丁寧に挨拶をする。

義道は樹珠愛の頭に手をおいて言った。

「この子は、私の最愛の娘の忘れ形見だからよろしく頼むよ。」

理事長と校長はへこへこ義道に頭をさげるだけだ。

何せ目の前に、経済界のドンと言われる東条義道がいるのだ。

義道は挨拶をすませると和道に言った。

「可愛い樹珠愛のエスコートをわしにさせてくれるか?

 今日は、樹珠愛の入学祝だ。

 西條と和道も一緒に本家へ来なさい。」

そう言うと、義道は樹珠愛の手を掴んで近くに停まっていた高級車に乗り込んだ。

和道と西條も朝自分達が乗ってきた車に乗り込む。

理事長と校長は驚きの眼差しで2台の車を見送った。



 
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