君と僕らの三重奏

       第4章 本家 −6−

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何曲かたて続けに弾いた樹珠愛は最後にモーツァルトのきらきら星変奏曲を

弾くと、手を止めた。その時、周りから拍手が聞こえてあわてて周りを見る。

義道だけではなく、隆道、和道、修吾が入り口のそばに立って拍手をしていた。

樹珠愛が恥ずかしそうにお辞儀をすると、義道が

「ありがとう。久しぶりにこのピアノを聞いた。今夜は本当に良い夜だった。」

と言い、「年寄りは早めに休むよ。樹珠愛、またピアノを聞かせてくれ。」と言うと

自室に戻っていった。


残った4人は、隆道と修吾が住んでいるという一角の広いリビングに移った。

「コーヒーでもいれようか?何か飲みたいものあるかい?」

リビングの隅にあるカウンターに行きながら修吾が聞いた。

「リクエストしていいの?」キラキラした目で樹珠愛が修吾を見つめる。

「いいよ。大概のものならできるよ。」修吾が不思議そうに言った。

隆道と和道は不思議そうに樹珠愛を見つめている。

「ミックスジュース飲みたい♪」

「ははははっ。本当に慎吾に育てられたんだね。

 あいつは、あれ大好きだったからなあ。」

そう言うと、修吾は内線電話をどこかにかけ

バナナとみかんの缶詰を持ってくるように頼み、

ミキサーをごそごそ出した。

樹珠愛は嬉しそうに修吾の隣に行くとミックスジュースの歌を

歌い始めた。

「ひょっとして、隆道、飲んだことないのか?」

「ええ。なんだか楽しそうな歌ね。じゃあ、私もミックスジュース飲もうかしら?

 和君も飲んだことない?」

「ああ。なんか盛りあがってるな。」和道はあきれたように樹珠愛をみていた。

「元々俺と慎吾の家庭教師が大阪出身でテストで100点取ると作ってくれたんだ。

 特に慎吾はそれのお陰で満点を取り続けた。そして帰ってくるとこの歌を家庭教師と

 歌ってミックスジュース作って飲んでいたよ。俺はいいかげんつき合わされて飽きたけど。」

その時、使用人がバナナとみかんの缶詰を持ってきた。

「樹珠愛ちゃん、一緒に作ろうか?」修吾が言うと樹珠愛はバナナをむきはじめた。

修吾はみかんの缶詰をあけて汁とみかんをミキサーに入れると樹珠愛はバナナを

小さくちぎって入れる。修吾は蜂蜜を少し入れて牛乳を入れ氷も3個入れてから

ミキサーにかけ、グラスに入れ樹珠愛に渡すと樹珠愛は嬉しそうに和道のそばに座り

口をつけた。二人も一緒に口をつけた。

「樹珠愛ちゃん?どう?」修吾が聞くと樹珠愛は嬉しそうに言った。

「おいしいよ。ほんとおいしい。」

「まあ、この缶詰が違うよね。」修吾はみかんの缶詰を指しながら言った。

(有名店の最高級のみかんの缶詰、高地限定栽培のバナナ、牧場直送の牛乳まずいわけないだろう。)

「なんか・・変わった味ね・・。」

「ああ。」この2人はあまり受けなかったらしい。

それでも、樹珠愛が嬉しそうにしているのを見てみんなが微笑んでいた。


「ただいま〜。」樹珠愛の声が玄関から聞こえる。

「おかえりなさい。和道様。樹珠愛様。」西條は、そう言ってから

樹珠愛の頬にキスをすると和道の唇にもチュッとキスをした。

「樹珠愛様、和装も美しいですね。どうでしたか?」西條が言う。

「う〜〜んとねミックスジュースが美味しかった。」

「お前の感想はそれだけか?」和道があきれたように言った。

「そうだ!!龍哉さんと和道と3人で記念写真撮るよ。

 化粧、しなおしてくるね。」ハイテンションで樹珠愛が自分の部屋に入っていった。


「とても有意義な夜だった。」和道がそう言うと西條は微笑みながら

「良かったですね。」と言った。

2人はそのままどちらからともなく唇を寄せた。

 
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