君と僕らの三重奏

       第4章 本家 −5−

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「樹珠愛が天才というのは毎日感じるよ。

 でも、人一倍繊細で傷つきやすいというかまだトラウマを抱えている。」

和道がぽつりと言った。

「トラウマ?」

「この前、4歳の時の事故がフラッシュバックした。

 あれを聞くと誰が犯人かすぐわかるだろうな。

 次の日起きたとき樹珠愛は何も覚えていないようだったが。」

「そう。大丈夫なの?」

「ああ、龍哉と話し合って今は樹珠愛が安心して眠れる環境を作る

 ことが先決だという結論になった。樹珠愛にとって、キースと慎吾さん

 が亡くなったことも深い傷になっている。樹珠愛は一緒に暮らす前は

 睡眠薬で寝ていたらしい。今だってぐっすりと眠れるのは時々だ。

 あの子は自分の部屋にベッドをいれることを考えることすらしなかったんだ。」

「ちょっと・・。じゃあぐっすり眠れるのはどんな時?」

「龍哉と俺と3人で眠るのが一番眠れるらしい。どうやら、キースと慎吾さんとも

 そんな感じで眠っていたらしい。最近は間違えることもないけど最初は

 龍哉をキースと俺を慎吾さんと寝ぼけて言うこともあった。そのくせして

 俺と龍哉に気をつかって、毎日は一緒に寝たがらない。」

「慎吾の亡くなった話は?ひょっとしたら・・。」

「ああ、修吾さん、樹珠愛は、たぶん心のどこかでまだ2人の死を認めていないと思う。

 それだけ、あの子には2人の存在が大きかったと・・・。」

「だから、私を見た時あんなに泣きそうな顔をしたのだね。」

「普段は、樹珠愛ちゃんどうやって休んでいるの?」

「夕飯が終わってから居間のソファーで休んでいる。近くに俺たちの気配があると

 浅くても眠れるらしい。たぶん俺達が寝室に引っ込んでからは起き出して

 研究やら仕事やらしていると思うけど・・。」

「そうなの・・。和道、それで大丈夫なの?」

和道はまっすぐな目で隆道に言った。

「俺は自分の生活に人が入ることは嫌だった。たぶん、龍哉もそうだ。

 でも、今は受け入れているし、樹珠愛が帰る家は俺たちのそばだと思っている。」




「和君、何かあったら、すぐ相談しなさい。

 それと、私たちも和道や西條、樹珠愛ともっと絆深めたい。

 私が得たものは、貴方達に伝えなくてはならない。この親子間でどろどろした関係は

 もう、終わりにしましょう。そうね。私が西條に男の抱き方講座してあ・げ・る。」

「え〜〜〜〜。」和道が大きな声を出す。

「どうしたの?」

「ひょっとして、修吾さん受けなの?え〜〜〜親父・・・おねえ言葉で修吾さん抱くの?」

隆道は和道の頭をグーで殴った。

「和君・・抱くときはおねえ言葉でないの。残念ね。」

隆道はそう言いながらにっと笑うと、修吾が真っ赤な顔をして隆道の頭をゴンと拳骨で殴った。

 
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