君と僕らの三重奏

       第2章 君の抱えるもの −4−

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「龍哉・・・タツヤ・・・ああん・・・いきそう・・いっしょ・・・に。」

和道がそう言いながら西條の首に手を回しながら果てた。

西條はぐったりした和道をベッドに寝かせると濡れたタオルで優しく体を拭き

丁寧に後処理をする。

シーツも代えるとそっと和道の横に滑り込み

和道の顔にキスの雨を降らし腕枕をして目を閉じた。



少しだけ眠ったのだろうか・・・?




西條は、窓の向こうが明るくなった気配がして目が覚めた。

「珍しいな・・この時期に雷か・・・。」

西條はそう呟き、毛布をもう一度ひきあげ、和道を抱き寄せた。

その時、かすかな声が聞こえたような気がして西條は眉を潜めた。

そっと起き出し、椅子に掛けていたバスローブを羽織り

リビングへの扉を開ける。



薄暗いリビングには稲光が差込んでいた。

「気のせいか・・。」

西條はキッチンに入り冷蔵庫からミネラルウォーターを出すと

グラスに移し変え、一口飲む。




その時、また何かかさっと音がしたような気がして西條は樹珠愛の部屋の方を見た。

リビングのソファーにいないと言う事は自分の部屋でまた何かをやっているのだろう。

念の為に樹珠愛の部屋の近くに行った西條は、泣き声のような声が

聞こえることに眉を潜めた。

「樹珠愛様?」ドアをノックしながら言っても返事がない。




外からは、大きな雷の音が聞こえる。

西條は、嫌な予感がしてドアを開けると、床にペタリと座り込んでいる樹珠愛がいた。

呆然と、窓の方を見て目を見開いている。


「樹珠愛様?」

西條は樹珠愛のそばに行き肩に手を置く。



『エリック・・・』怯えたように樹珠愛が言い・・肩が小刻みに震える。

その後、樹珠愛は目を見開き声にならない悲鳴をあげる。

『おかあさま・・・・おかあさま・・・』と呟く。

その話し方は、とても幼い。




西條は大声で、「樹珠愛!樹珠愛!」と樹珠愛の肩をぎゅっと抱きしめた。

樹珠愛は、小刻みに震えている。

『おかあさま・・・まっか・・・』

「樹珠愛、目を覚ますんだ。」西條の大きな声も届かない。



「龍哉!どうしたんだ?」

西條の大きな声で目を覚ましたのだろう。

和道が眠そうな顔をして開きっぱなしのドアから、顔を出した。

樹珠愛は、小刻みに震えていて真っ青な顔をしている。

『おかあ・・さま・・・。』

「和道様、毛布を持って来てください。

 体が冷たい。」西條が大きな声で言うと

和道ははっとした顔をして寝室に戻り毛布をはぐと

樹珠愛の部屋に入ってきた。



西條の腕の中の樹珠愛は今度は小さな声で

『痛いよ・・・痛いよ・・・。熱いよ。』と繰り返している。

体は驚くくらい冷たく震えている。

西條は、和道の持ってきた毛布で樹珠愛の体をつつみ抱きしめる。

『もう大丈夫だから・・。』そう英語で言う。

和道も樹珠愛の隣に座り、樹珠愛の頭を撫でる。

『樹珠愛、大丈夫。』和道も英語で言う。

『あったかい・・・。キース。』

西條は、ぎゅっと樹珠愛を抱きしめて言った。

『樹珠愛、大丈夫だよ。ほら、あたたかいだろう。』

『私・・夢を見たみたい・・・。』

『うん・・・。』

『エリックが撃った。ベスが頼んだって・・・』

『うん・・・。怖かったね。でも大丈夫だよ。』

子供をなだめる様に西條は言う。

『だんだん・・おかあさま冷たくなった。そうだ、お母様は?』

『樹珠愛、今はゆっくりおねむり。』

西條はそう言いながら樹珠愛を抱きしめる。

『キースそばにいる?』

『ああ。』

『慎吾もいる?』

『ああ。ここにいるよ。樹珠愛。』

和道がそう言いながら樹珠愛の頭を撫でる。

『じゃあ、安心だね。』樹珠愛はそう呟きながら目を閉じたようだ。




 
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