君と僕らの三重奏

       第2章 君の抱えるもの −3−

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「樹珠愛ちゃん、待っていたのよ。」

社長室に入ると隆道が樹珠愛に抱きついてきた。

東条隆道・・・東条コーポレーション社長でありグループの総帥でもある。

和道の父親でバリバリのやり手だがこの人素はおねえ言葉というなかなか面白い人だ。

「樹珠愛様、まずは貴方が基本的に毎日やっている仕事を教えてください。

 その他にも、重要度の高い仕事だけは教えてください。」

「毎日やっている仕事は、私の持っている株式の操作と、

 私とキースの共同開発のプログラムの更新作業

 それから、ゲームソフトも少しずつ作っているわ。

 重要度が一番高い仕事は、6カ国にある私も出資している病院の緊急手術。

 それから、私が外科主治医契約している6家族の緊急手術というところかしら。

 あとは、もろもろ・・・。それから、キースと慎吾の財産は今弁護士に任せていて

 近々遺言通り私に相続されるでしょう。」

「じゃあ・・・まずは・・・。」

西條は、こまめに樹珠愛の仕事を聞いていった。



結局、本社の中に事務所を間借りすることにした。

西條は次の日には、本社の内部でできる仕事をそちらに分け、

ソフトの会社を和道を社長に据え新設し、優秀なプログラマーを

関係会社から引き抜きチーフにしてその人に全てを任せた。



樹珠愛のスケジュール管理は飛行場に迎えに行った橘が受け持つことになった。

樹珠愛は多種な仕事をこなし、海外の活動がほとんどなので

35歳独身(恋人は男)の橘に白羽の矢が立ったのだ。

橘は、内示が降りるとすぐに樹珠愛のそばで働き始めたが、樹珠愛の仕事の後処理だけでも

膨大な量があることに辟易し、秘書を数人増やさなくてはいけなくなった。


それは、樹珠愛と対面したチーフプログラマー岡島祐樹も同様で

樹珠愛が短時間で自分が何日も悩んだ箇所を解決するのを見て絶対の信頼を持ち、

要求の厳しさに閉口し、そのせいで部下から鬼チーフと言われる羽目に陥った。

結局会社の一角と思っていた事務所も仕事を細分化することによって、

ワンフロアが必要になったので西條に相談したら、

本社の組織形態の改革もするからなどとあっという間にワンフロアを開けてくれた。



最初の1週間は樹珠愛もぎっちり会社に行っていたがそれ以降はスタッフや橘に泣きつかれ

(樹珠愛が仕事をすると仕事が増えるから)1日3時間くらいしか行かなくて良くなり、

足りない分は、マンションの新たに作った書斎でやっている。



マンションの方も模様替えをして、リビングには座り心地(寝ごこち?)の良いソファー

が入り、機械だらけだった樹珠愛の部屋も趣味の良い家具が入り、西條と和道の寝室にも

キングサイズの大きなベッドが入った。



「樹珠愛と住んでからすごく規則正しい生活になったよ。」と漏らしたのは和道で、


週最低2回はぐっすり眠れることは今まで睡眠不足気味だった

西條や和道にも良い影響を与えたようだ。

樹珠愛も規則正しい食事と睡眠、そして和道に薦められて

週数回通っているジムのお陰で顔色がかなり良くなった。

 
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