君と僕らの三重奏

       第2章 君の抱えるもの −2−

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次の朝、樹珠愛はひさしぶりに気持ちよく目が覚めた。

目覚めた時、西條と和道が両頬におはようとキスをしてくれて

なんだか2人に家族として迎えられたようでこそばがゆくて

嬉しかった。



シャワーを浴びてリビングに戻ると純和食の朝食が

テーブルに並べてあった。

「樹珠愛様、どうぞ。」

ワイシャツに黒いギャルソンエプロンをした西條が

温かい味噌汁を差し出した。

本家から届けられたらしい。

「うーーん・・・幸せ。」

樹珠愛が嬉しそうに言うと和道と西條が優しく微笑んだ。

和道は、朝ごはんを食べると今日は朝から講義だと大学に行った。



西條は、樹珠愛の部屋の機械を見て、少し考えて言った。

「昨日は、このマンションの下の部屋を使えばいいと思いましたが

 思ったよりも大きな規模ですね。

 とりあえず、本社ビルに空き部屋が数部屋ありますので、そちらに

 移しましょう。」

「この部屋じゃだめなの?」不思議そうに樹珠愛が言うと西條が

「樹珠愛様、貴方は社会人でないのですから高校にはいるとお友達もできるでしょう。

 それで、貴方の部屋がこうだと家にも招待できないでしょう?」

「招待って・・そういうものなの?」

樹珠愛は学校に通ったことがないからわからないのだ。

「そうですね。特に女の子ならお部屋でのおしゃべりを楽しむと思いますよ。」

「わかりました。じゃあ、そのようにお願いします。」

「それでは、手配します。樹珠愛様も今日は一緒に本社に参りましょう。

 樹珠愛様には、1日3時間自分が働く上で円滑に自分のビジネスを進めれる

 シュミレーションを組んでもらいます。」

「へっ?私1日3時間労働?」

「そうです。多くの高校生は授業後、部活と言うクラブに参加します。

 働いている高校生もおりますがアルバイトという形で週に何日か数時間です。

 何しろ、本分は勉強にありますしね。だから、余裕のある生活のためには

 1日3時間くらいが妥当だと思います。その分、滞らないように優秀な人材を

 使われたほうがよいと思います。」

「私には人を使う経験がないから、西條さん色々と教えてくださいね。」

樹珠愛はわからないことはわからないと言う性格らしい。


「かしこまりました。とにかく、立ち話も何ですから本社に行きましょう。」

と西條が言ったので、樹珠愛は近くのダンボールからスーツを取り出し

洗面所に着替えに向った。

・・・樹珠愛様、普通の女なら機械より服の整理が優先ですよ。まったく面白い方だ。・・・

西條は、そう思いながらクッと笑った。



1時間後、本社ビルでは、珍しい2人連れに振り返る人が沢山いた。

西條龍哉。東条コーポレーショングループ総帥の東条隆道から多くの権限を与えられた男だ。

18歳でアメリカの有名大学を卒業後、東条コーポレーションニューヨーク支社に

入社後1年で当時の支社長の裏取引を暴き支社長に就任。

就任後3ヶ月でその支社は同系列NO.1の売上を

打ちたて東条社長自ら自分のブレーンになってほしいと頭を下げたと言う伝説の持ち主だ。

しかし、この男、常に冷静。鉄仮面。とにかく、生活感というものが感じられず

会話も、部下とビジネスの話だけ。

身長は190センチもあり、鋭い眼差しは肉食獣のようでその威圧感に誰も声をかけれず

その筋の人のようにも見え、本社の女の社員は「西條様は観賞用なの。」と口を揃える。

唯一その表情が優しくなるのは、隣に御曹司である東条和道がいる時だけだ。

しかし、和道も会社ではストイックな振りをして表面上の笑顔しか浮かべないので

西條の優しい表情というものはレアものなのである。

その男がスーツ姿の女を連れて歩いている。女と言うよりも少女という感じである。

それだけで、社員の目には充分に違和感がある。しかも、西條が微笑んでいる。

これだけでも、怖いものを見たような気がするのは決して気のせいではないはずだ。


 
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