君と僕らの三重奏

       第1章 君と僕らの出会い −5−

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「あっ和道。おかえり〜」

次の日和道がマンションに戻ると樹珠愛の声が部屋からして樹珠愛がバタバタでてきた。

ジーンズにTシャツ姿の樹珠愛は確かに可愛いがこれから出かける格好ではない。


「樹珠愛。帰ってきたら出かけると言ってたろう?」

和道はどこか兄貴口調だ。

「あ〜〜ごめん・・忘れてた・・。ってどこに行くんだっけ?」

「親父の会社。ほら、親父に会わせるって言ってたろう。」

「そうだ!じゃあ15分待って。可愛い樹珠愛ちゃんになってくるから。」

そう言うと樹珠愛は急いで部屋に入っていった。

和道はソファーに座るとゆっくりと足を組んだ。

今日は、樹珠愛に父の経営する東条コーポレーションを案内しようと

講義を終えると早々と帰ってきたのだ。


15分後部屋から出てきた樹珠愛は「すっげ〜違いすぎる。」と呟いた和道を

グーで殴り、にっこりと「それでは、参りましょうか?」と微笑んで見せた。


和道は、顔を引き攣らせながら樹珠愛の手を取り車にエスコートした。

なんだかんだと言ってもやはり和道は大会社の御曹司である。

そして、樹珠愛もエスコートされるのに慣れているようだ。




東条コーポレーションでは社長と西條がフランスのクレール財閥グループの総帥と

会談をしていた。

クレール財閥はヨーロッパでも力のある企業で、最近アジアに目を向けているらしい。

それで、今回は視察も兼ねて日本に来たらしい。

ピエール・J・クレールは、クレール財閥の総帥でかなりの切れ者である。

このままでは商談に発展するのは大変だなと社長と西條は感じていた。


会談が終わり、目に見える成果も期待できずに社長と西條が

総帥を送り出そうとして社長室から出たとき、

和道と樹珠愛がエレベータから降りて来るのが見えた。

2人は、人がいるのに気がついたようにこちらを見た。



以外にも一番最初に動いたのはクレール総帥で、樹珠愛の方に歩いていくと

腕を広げて樹珠愛を抱きしめ頬にキスをする。



すると、樹珠愛はおもむろにクレール総帥の頭を叩いた。

これには、社長も西條も和道も目を見張る。

『ピエール、禁煙しなさいっていったでしょ?』

『はははっ。相変わらずだね。樹珠愛。いつぶりかな?』クレールが嬉しそうに言った。

『ほんの半年前でしょ。痛いって泣いて電話よこしたのは。』

『そんなこともあったね。』

『ピエール、確か捻挫だったわよね。それって。』

『だって樹珠愛に会いたかっただもん。』

『世界中のどこに捻挫でアメリカにいた私を呼びつける人がいるのよ。』

『そんなこと言わないで・・愛しい人・・。』クレールは大げさに嘆いてみせる。

『ソフィアに言いつけるわよ。』

『樹珠愛・・・それは・・・。』

『そうでしょうねぇ。ソフィアはピエールの愛妻ですもんねぇ。』

『ソフィアも、樹珠愛のことは大好きだよ・・・でも・・愛しい人は無かった方向で・・。』

『ふふふっ。ところで、ピエール、日本には何で?』

『ほら、我が社もアジアに市場を展開しようと思って視察。

 ところで、樹珠愛せっかく会ったんだから話したいな。』

『そう?でも、ピエール帰るとこだったんでしょ?残念。』

『いや。時間はあるよ。というか作る。』と言うと後ろにいた秘書に命令して

その後の予定を全部キャンセルさせ、飛行機の時間まで3時間ほど時間を作った。

『ところで、樹珠愛?何でここに?』

『だって、東条社長は私の伯父様ですもの。』樹珠愛がにこにこしながら言った。

『そうなのですか?』クレール総帥は驚いたように社長を振り向いた。

『ええ。総帥?良かったらまた先ほどの部屋に戻りませんか?』

社長は、クレール総帥にそう言うと、樹珠愛に微笑みかけた。

「会いたかったよ。君と最後に会ったのは、まだ3歳の時だったけどね。

 大きくなったね。」

樹珠愛も嬉しそうに微笑みかけた。

 
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