君と僕らの三重奏

       第1章 君と僕らの出会い −2−

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注)作中「」は日本語、『』は英語で話していることにします。





「ここか。」

西條は、マンションの地下駐車場に愛車のBMWを入れ、降りた。

和道は後ろから歩いてくる。



2人はそのままエレベータに乗り、西條が最上階のボタンを押した。

最上階はペントハウスになっており、エレベータが開くとすぐマンションにしては重厚なドアがあった。

もらった鍵でドアを開けると部屋が暗い。

「まだ、来ていないようだな。」和道はそう呟いた。

もう中は業者が整理したようで整っていた。




「俺は、嫌だって言ったんだ。龍哉。」和道が声を荒げた。

「そうは言いましても。和道様・・事情を・・・」




西條がここまで言ったとき、ソファーから人影が動き、

「Shut up!」と女の声がした。



見ると、小柄な女が暗闇の中、立っている。

女というよりまだ少女の面影が残っている。この子がこれから一緒に暮らす子なのだろうか?



『また、喧嘩したんだね。キース・慎吾。どうせ、慎吾がわがまま言ったんでしょ。

 ほら、仲直りのキスをしな。慎吾から心をこめてするの。』

どうやら、慎吾というのは和道のことらしい。

女の子は和道を西條の方へ押し出そうとする。


『いや・・喧嘩というわけでは・・。』和道はその剣幕に押されて恐る恐る言った。

『そうですよ。何も喧嘩したわけでは・・。』西條も言う普段の冷静な姿はそこにはない。

『キースもいつも慎吾をかばわない。さっさとキスしな。』

女の子の目は据わっている。




その迫力に押されて、和道は西條の頬に唇をよせようとすると、女の子に思いっきり頭を叩かれる。

「いてっ。」和道は頭を押える。


『バカ!愛し合っているのに仲直りのキスが頬?いつものように濃いキスしろ!

 小学生の劇じゃないんだぞ。』

英語だがかなり怖い内容だ。



和道はその迫力に押されて西條の唇に唇をあわせる。

西條は和道の腰を抱きキスに答えて、和道の歯茎に舌を滑らせる。

「あ・・ん」ついつい、和道の声が漏れる。



女の子はにこにこ笑って嬉しそうに言った。

『だから喧嘩はだめだよ。じゃあ、私の頬にもう喧嘩しないってキスして。

 ほら、いつものように。同時に。』

そう言って目を閉じる。


和道と西條はその可愛らしさにくすっと笑い頬にキスを落とした。

すっかりこの女の子のペースになっているが・・・




『じゃあ、一緒に寝よ。いやあ5日も徹夜したから・・・キースと慎吾の亡霊見ちゃってるよ。

 でも、良いんだ。亡霊だから甘えちゃおう。

 キースごめん・・・最近薬にしか頼ってなかった。慎吾ごめん。

 やっぱり両方に人肌・・和むなあ。亡霊でもあったかいね。』



女の子はそう言ってそのまま2人の腕を抱えたまま床に転がるとすーすー寝息をたてる。

その頬には一筋の涙。





2人は顔を見合わせて苦笑いをした。

すると、女の子がいきなり目を開けて言った。

『キース。今日はHしちゃだめだよ。いいじゃん。たまに2人に甘えても。

 その代わり明日はしていいからさ。

 仕事、手伝うよ。なんだか寒いな。なんかかけて。』

そう言いながら西條の腕の手を緩める。



西條は隣の部屋のベッドの上に置いてあった毛布を2枚取り、居間の電気とエアコンのスイッチを

入れると2人に毛布をかける。



『キースだあ。』女の子はにっこり微笑んで再び西條の腕をつかむと

2人の頬に小さなキスをしてまた寝息をたてた。



和道は少し体を起こして小さな声で言った。

「こいつ、俺らみたいなのと暮らしてたのか?」

西條も小声で答える。


「どうでしょうかね?でも、キースという名も慎吾という名も男ですね。」

「まあいいか。龍哉俺も寝る。まったく怒る気も失せちゃったぜ。」

そう言って和道は目を閉じた。



「おやすみなさい。和道様。愛しておりますよ。」

西條もそう言いながら目を閉じた。

「う・・・ん・・俺も・・・」和道はむにゅむにゅしながら言った。

女の子に腕を取られるという普段ではあまりない経験に戸惑いながらも

夜は静かに更けていった。

 
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