君と共に紡ぐ調べ

       第9章 喜ビノ産声 −4−

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慧が眠りに着くとリューゼは慧をそのまま抱きかかえた。

リュークは部屋の隅に行き、紐をひくと、ベッドがゆっくりと

持ち上がり、その下に小さな池が現れた。


横に泉があるようで、水が絶え間なく流れ出ている。



リュークは「無事のご誕生をお祈り致します。」と言ってリューゼに

頭を下げると静かにその部屋を退室した。

龍の当主は次期龍王の誕生には立ち会えないしきたりがあるからだ。



リュークが出て行くと、リューゼはゆっくりと小さな階段を降り

池の真ん中に大切そうに慧の体を浮かべると慧のおなかに手を翳して

力を込めた。



銀の龍達からの光が強く慧に注ぎ慧の体を守る。

同じように子供達の光が慧のおなかに当たり、子供の体を守った。



部屋はまばゆいばかりの光に包まれて。

明るく輝いた。




リューゼの周りが色々な色に光り、妖精たちが踊り歌を歌い始める。


「金の龍が作りしナバラーンの地に

 ナバラーンに愛されし妃から新たな命が産まれる。

 新しい命。このナバラーンの次章を彩る王となる子。

 今しばらく偉大なる父の腕に抱かれ、

 慈愛ある母の胸に抱かれ、愛を知りたまえ。

 そして、栄えあるナバラーンに新しき風を

 新しき祝福を与えよ。」



すると、リューゼの中から金色の光の龍が天井まで昇り、

まっすぐに慧のお腹を突き抜けた。



この龍は、龍王に必要な知識の龍、



次に子供達の体がそれぞれの龍の色に光り小さなそれぞれの龍が

リューゼの金色の龍の後を追った。



眠っている慧にも負担が掛かるのか、慧はうーーーっと唸りながら

眉をしかめている。

それに合わせて銀色の光が慧を濃く包む。



「慧・・もうすこし・・・頑張れ。」

リューゼは慧の頬を撫でながら言った。

小さな光の龍は、それぞれの龍の知識を龍王に授けるものだ。

全ての龍が消えると「うーーーっ。」と言いながら

慧が目を覚ます。



「痛い・・・・。」

慧はリューゼに手を伸ばして抱きつく。

「慧、ゆっくりと呼吸を。」

慧は額に脂汗を流しながら前かがみになりながら

息を整える。



リューゼが慧の背中をゆっくりさすって落ち着かせてくれる。

「うーーーー・・・・。」

「慧・・・息を止めてはいけない・・・。」

リューゼがそう言ったので、慧は頷きながら

再び息を整えた。



すると、銀の光が慧の体を大きく包み

不思議に痛みが消えていった。


小さく呼吸する慧にリューゼは

果実水を飲ませたり、軽くマッサージをしてくれた。




「あっ・・・リュ・・・ゼ・・・いた・・・い・・・」

しばらくすると慧は再び痛みを訴えた。



銀の光が包んでも痛みが消えていかない。

「慧・・・そろそろだ。頑張れ。」



リューゼがそう言うと慧はリューゼの両手にしがみついて

いきみだした。



おなかがめちゃめちゃ痛い。

内臓が出ちゃいそうだ。


慧は、半泣きになりながら、夢中でリューゼにつかまった。



しばらくすると慧の体の中から金色の光が出てきて

リューゼの体から出る光としっかりとまじりあった。



「子供を引っ張り出すから、慧・・・呼吸を。」

リューゼはそう言いながら金の龍の力を使い始めた。



「グゥエーーーーーー。」

慧は強烈な痛みに獣のような声を出した。



「ケイ!!呼吸だ、ほら!!」

普段穏やかなリューゼも語気を強めて慧の手を握る。



慧の呼吸に合わせてリューゼは力を送る。

「うーーーーぁあああ。」

慧の口からはそんな声しか漏れない。



しばらくして、リューゼが言った。

「慧、もう少しだ。出たら自分で抱きあげるんだぞ。」

「リュ・・・ゼ・・・無理・・・うーーーーーーっ。」



慧はそううめきながらこれが最後とばかりに思いっきり

いきんだ。



すると何かが出たような感じがする。

恐る恐る手をやると子供の顔のようだ。



慧は息を吸い込みまたいきむと同時に

夢中になって子供を抱きあげた。

ウギャーウギャーと泣く産声が部屋に響き渡った。





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