君と共に紡ぐ調べ

       第9章 喜ビノ産声 −2−

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聖離宮では、リュークが当主と銀の龍を集めていた。

「どうした?リューク?」ガイがそう聞くと

リュークが口を開いた。

「実は、もうそろそろ子供達が起きる頃なのです。

 しかし、何かの原因があるのか、子供達は起きる気配をみせません。

 子供達が起きないと龍妃様も出産できませんし・・。」


「リューゼは何と言っているのかな?」イツァークが言うと、

「リューゼは、皆が慧のおなかと子供達に対して

 もっと呼びかけることが大切だと言っておりました。」


「呼びかける?」

「リューゼが言うには、もうおなかの子はきちんと自我があるそうです。

 だから、おなかの子には皆が誕生を待っていると、子供達に対しては

 次期龍王の為に早く起きなさいと呼びかけた方が良いそうです。」


「出産が遅くなるとケイに負担がかかるのですか?」

ジークが心配そうに聞いた。

「たぶん、体には負担はかかると思う。

 何しろ、龍妃が自然出産するという記録はかなり過去のもので

 古典を紐解くのに近い作業でわからないのです。」リュークが言うと

ファルも続けて言った。


「私と父で万全の体制を整えるようにしておりますが

 やはり出産というものは祈るしかないところもありますので・・・。」

「ケイは、体力があまりないから心配だなあ。」ロベルトが言うと

皆が頷いた。


慧は成長期に多々無理をしたので、普通の人に比べても小柄で華奢である。

「龍の姿で産むのも大変だったのに・・・。」サイシュンが心配そうに言った。

銀の龍達は心配そうに顔を曇らせる。


自分は何とか耐えれたがやはり出産はかなりの負担がかかったからだ。

「とにかく、子供達への声がけが必要ならそうするしかないな。」

ガイがそう言って立ちあがった。


皆もそれに続く。

こうして、慧の周りも少しずつ出産というものを意識し始めるのであった。










「ああぁ・・・ん、リューゼ。」

慧が甘えたようにリューゼの名を呼ぶ。


「慧・・・。」リューゼは優しく慧の体を愛撫する。

「だめぇ・・・・声・・・聞こえちゃう。」


いつ体調が変わるかわからないので、最近慧が抱かれるのは

聖離宮の龍王の寝台の上なのだ。


「大丈夫。結界がある・・・

 慧・・・。入れるぞ。」


リューゼはそう言いながら、横になっている慧を後ろから

抱きしめて少しずつ入れてくる。

「ああああ・・・・ぁあああ。リュ・・・リューゼ。」

慧が気持ちよさそうにリューゼに体を預けた。


リューゼは最近自分の快感より慧の快感を重視する。

今も敏感になった慧の首筋を愛撫しながら

優しく体を動かす。


「あああ・・・・・リューゼ・・・溶けちゃうよ。ああああぁああ。」

慧は甘い声で啜り泣きながら高みに昇った。


リューゼは疲れてぐったりなっている慧にキスをしながら

「愛してる・・・ゆっくりおやすみ。」と言いながら

癒しの術をかけると慧は小さな寝息をたてはじめた。






リューゼは、慧を抱いて寝室を変えると(聖離宮には龍王の寝室が数部屋ある。)

清潔な寝台に慧を横たえて、そのおなかに手を翳した。




・・・そろそろ・・・時が満ちてきたのではないか?・・・

リューゼがそう話しかけると小さな声がリューゼの耳に届く。


・・・ここはきもちいい・・・


・・・不安か?・・・


・・・・・・・


・・・・・・・


リューゼは優しく微笑みながら慧のおなかに手を当てた。

・・・何も心配することはない。

 力が足りないなら私の力を使えばよい話だ・・・・



リューゼは慧が眠っている間、できるだけこうしておなかの中の子と

コミュニケーションを取るようにしている。


そして、おなかの中の子が産まれることを不安に思っていることを

悟っていた。

特に自分の結界に慧を閉じ込めリューゼに助けられてからは

臆病になっているようだった。



・・・・・・・・


・・・・・・・・


しばらくおなかから声が聞こえなくなった。

そして、再び小さな声が聞こえた。




・・・ありがとう・・・・・・




リューゼは微笑んで言った。

・・・・私も君を抱くことを楽しみにしているよ。おやすみ・・・・

リューゼはそう言うとおなかから手を離して

慧を抱きしめて目を閉じた。




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