君と共に紡ぐ調べ

       第8章 届ケ小サナ歌声 −9−

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リューゼがゆっくりと体を起こしたので当主、銀の龍、子供達は

歌うのをやめ、寝台で眠っている慧の方を見た。

リューゼは、慧の額を撫でながら言った。

「慧は、ちゃんとこの体に戻ってきた。

 今は、疲れて眠っているだけだ。」


「あっ。」子供達が慧のおなかを指差した。

さっきまでぺったんこだったおなかはおおきな膨らみがある。



皆が喜びに包まれた。

「あとは我々の仕事です。皆は子供達の面倒を。龍王様は少しおやすみください。」


リュークがそう言うとファルは優しく微笑んで言った。

「大丈夫。龍妃様の意識が戻られたらまたお見舞いに来れますよ。」

子供達は、小さく頷くと部屋を後にした。



リューゼは、自分の部屋に戻って少し休むと再び、慧の傍にきて

手を握って言った。

「慧、そろそろ起きなさい。」

すると、慧はぼんやりと目を開いた。

「「ケイ!」」

普段は、龍妃と呼ぶリュークとファルも思わず慧の名を呼び、

蒼龍の癒しの術を使う。


慧は、ゆっくりと2人を見つめ、リューゼを見ると少しだけ微笑みかける。

「ケイ。ゆっくりとおやすみなさい。」

リュークがそう言うと慧は小さく頷いて目を閉じた。









「ケイ、もう終わりにしよう。」

ジャンがそう言いながら慧を支える。

「何だか、前もこんなことあったよね。」

慧はそう言いながらジャンを見あげた。


「ああ、誰かさんが海中で何ヶ月も眠っていた後な・・。」

ジャンはそう言うと、慧を軽々と抱きあげ、部屋に向って歩き出した。


ずっと眠っていた慧が回復するまでかなりの時間がかかった。

体力が落ちたのもあるが、再びおなかに子が宿ったのでつわりにも苦しめられた。


ベッドで起きあがるまで数週間、部屋の中を数歩歩けるようになるまで

1月もの時間がかかった。


それでも、少しでも体が動かせるようになるのは気持ちが良い。

慧の周りには常に銀の龍がいていろいろと世話をしてくれる。



そして、夜はリューゼが優しく抱いてくれる。

リュークとファルが文句を言わないのは、リューゼに抱かれないと

おなかの子供に影響があるからだ。


体力のある時は一晩に何回も抱かれていたが、今は1回が限度だ。

申し訳ないと思いながらも、

慧は愛しい人に抱かれる幸せを感じていた。





部屋に戻ると子供達がわらわら入ってきた。

「お母様、絵本読んで。」

「かあさま、お話しして。」



そこにジークが入って来て言った。

「龍妃様は、足のマッサージをするから、ここにいるならこいつと遊べ。」

そう言いながらポケットから聖獣を取り出すと

子供達はキャッキャ言いながら聖獣を抱いたり頬ずりをした。




ジークのマッサージはとても気持ちが良く、慧がうとうとし始めると

子供達も慧の周りに来てぴったりとくっついて眠り始めた。

「ケイ、眠りなさい。」

ジークがそう言うと慧は頷きながら心地よい眠りに身をまかせた。





慧が目を覚ますと自分の周りで子供達が眠っていた。

「可愛いな。」慧は嬉しそうに微笑んで子供達を見渡す。


「おかしいな。いつもなら私が目覚めると起きるんだけど・・。」

慧はそう言いながら、近くに寝ていたヘルメスの髪を優しく撫でた。

ヘルメスは嬉しそうに微笑んだ。



ところが、しばらくたっても子供達が起きない。

肩を揺らしてもスースー眠り続けている。

蒼の術で子供達の体を見ても何も変化はないし

熱を出しているわけでもない。



何かが変だ。



慧の直感が告げた。

慧は、フラフラとベッドから起きあがると

よろけながら隣の部屋のドアを開けて大声で言った。



「リューク、ファル!!早く来て。子供達が起きない。」




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