君と共に紡ぐ調べ

       第8章 届ケ小サナ歌声 −8−

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数日後、龍妃の寝室にリューゼ・龍の当主、銀の龍

そして、子供達が集まった。


まず、リューゼが慧の枕元の椅子に座り深呼吸して息を整える。



そして、ルネとルイに向って大きく頷くと

ルネとルイは、美しい旋律をハミングする。

リューゼから金の光が慧に静かに降り注ぎはじめると

楽器ができる龍の当主達は自分の楽器を奏で始め

子供達が歌い始めた。



「さみしくなんてないよ。

 ぼくらはいつもいっしょだから。

 だから、ぼくたちにかおをみせて。

 そして、いっしょにあそぼう。

 うたうたおう。


 とうさまやみながかあさまをたいせつにするように

 ぼくらはきみをたいせつにする。

 ぼくらはきみのためにうまれてきたのだから

 きみがわらうとぼくらもうれしいんだ。


 ぼくらがわらうと、とうさまやかあさまもよろこぶ。

 だから、はやくぼくらのそばにきて。」


子供たちは何度も何度もその歌を歌い続けた。






・・・・こえ・・きこえる・・・・。


白い空間で、慧と金色の龍は横になっていた。


金色の龍は日々、やつれてきた。

それは、リューゼが慧を抱くことができないことと

この結界を保つのが予想以上に

力を消費するものだったからだ。


唯一頑張れる救いは母である慧がそばにいて

はげましてくれることだった。


そして、慧自身も金の龍に自分の力をあげているので

寄り添うように横になることしかできないでいた。



・・・ きみがわらうと・・・・うれしいんだ。

 ・・・とうさまやかあさまもよろこぶ。

 だから、はやく・・・ぼくらのそばにきて。・・・


かすかに聞こえる歌声は確かに2人に届いた。



・・・わすれられたんじゃないんだ・・・

金の龍はそう呟く。

それと同時に金色のあたたかな光がただよってきた。



「リューゼ・・・。」慧がそう呟く。

・・・・聞こえるか・・・

リューゼの声が聞こえる。

「うん・・・。」

・・・・結界を解いたら私が道を作る。

 慧、子供を抱きしめて離してはいけない。

 たぶん、かなりの衝撃が来るから・・・・

「わかった。」





 さみしくなんてないよ。

 ぼくらはいつもいっしょだから。

 だから、ぼくたちにかおをみせて。

 そして、いっしょにあそぼう。

 うたうたおう。


 とうさまやみながかあさまをたいせつにするように

 ぼくらはきみをたいせつにする。

 ぼくらはきみのためにうまれてきたのだから

 きみがわらうとぼくらもうれしいんだ。


 ぼくらがわらうと、とうさまやかあさまもよろこぶ。

 だから、はやくぼくらのそばにきて。




リューゼと話をしているうちに歌声ははっきりと聞こえてきた。


慧は、金の龍の頭をしっかりと抱きしめて言った。

「帰ろっか・・・?」

金の龍は小さく頷いて言った。


・・・ごめんなさい・・・かあさま・・・

慧は、にっこりと微笑みながら首を振った。

・・・僕も君とまた会えるのすごく楽しみにしているからね・・・

金の龍は慧の腕の中で小さく頷くと目を閉じた。



それと同時にパリンと結界が砕ける音がする。

慧を強い力が包みすごい圧力が体にかかる。

慧は、無我夢中で腕の中の金の龍を抱きしめた。



「ケイ!!」リューゼの光が手となって慧をしっかりと抱きしめると

今度は凄いスピードで体が移動をはじめた。

慧はただ、腕の中の金の龍をしっかり抱きしめることだけを考えていた。


段々スピードが弱まり、慧はがっしりとした腕に抱きしめられた。

「リュ・・・ゼ・・・。」

「もう、大丈夫。すこし休みなさい。」


その言葉を聞いた慧はゆっくりと意識を手放した。

・・・・かあさま・・・ありがとう・・・・

そんな小さな声がかすかにしたような気がした。



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