君と共に紡ぐ調べ

       第8章 届ケ小サナ歌声 −7−

本文へジャンプ




「みんなここに呼ばれたのは何でかわかりますか?」

ファルが口火を切った。


数日後、聖離宮の居間に当主達と銀の龍と子供達がいた。

子供達はシュンとして下を俯き、当主達、銀の龍達は厳しい顔をしていた。


「やくそくやぶった・・・ごめんなさい。」

バルドルがそう言うと、他の子も口々にごめんなさいをした。


「あの約束は、みんなの体を守る約束なんだよ。

 だから、もう絶対破ってはいけないよ。」


リュークが諭すように言うと、ヘルメスがおずおずした口調で言った。

「おこってない?」


「みんな怒っているよ。でも、それは君達が大切だから怒っているんだ。

 もし、みんなが龍の約束をしていたら、もう死んじゃっているんだよ。」

イアンがそう言うと、子供達は何度も何度もごめんなさいと言って謝った。



「でも、私達は、君達がいたずらで約束を破ってないと思っているのです。

 どうして、龍になったの?」ニコライが優しい口調で聞くと子供達は

困ったように互いに顔を見合わせた。


「怒らないから、言ってごらん。」アハドが言うとカノンが口を開いた。

「ぼくたちのこえ、かあさまにとどいているのでしょう?

 だから、うたをつくりたかったの。」


「でも、ことばはなせなくて・・・。」マルスが眉毛をハの字にして言った。

「りゅうのときだと話せていたから・・・。」ハルが小さな声でそう言った。


子供達は、龍の時は一種のテレパシーで話ができる。

しかし、人型の状態ではうまく言葉が続かない。

続に言うと、話したいことはあるのだが、言葉がわからない状態なのだ。



「何で私達に相談しなかったんだい?」イツァークが聞くと

レイが言った。


「だって、みんなかあさまのことはなすけど、おとーとのことはなさないんだもん。」

クロノスが言うと、シュウも口を開いた。

「おとーと、さみしがってるもん。」




「なるほど・・。」ガイがそう呟き、他の当主達も納得する。


「どういうことなんです?」ジークが言うとフェルが口を開いた。

「繋がってるからだ。」

銀の龍達はますますわからない顔をする。


「フェル、その説明は簡潔すぎるな。

 我々当主と龍王は特別な関係なんだ。

 我々は常に龍王の感情がわかる。

 喜びや悲しみ怒り全てだ。」

「それって大変なことじゃないですか?」アルが口を開くとガイが言った。


「まあ、俺達も大人になってからはその力を調整できるようになったし、

 リューゼは喜び以外の感情は極力抑えるようになったから

 あまり影響はないな。でも、考えてみたら子供の時はよくリューゼの感情に

 引っ張られたな。」


「じゃあ、この子達が弟を思って寂しいと思うと言うのは、

 次期龍王は、寂しくて慧を結界の中に引っ張り込んだのですか?」

サイシュンが聞くとリンエイが言った。


「そういうことになると思う。」


「と・・・言うことは。歌を作る必要があるな。」ルネが口を開くと

ルイが「お手伝いいたします。」と言うと、カノンがルイのそばに行って

「ぼくも・・・。」と言った。




その日から、子供達はイアン、ニコライ、リンエイ、サイシュンに手伝って

貰いながら、慧と弟に向けた歌詞を考え始めた。


ルネとルイはその歌詞を曲にするために

楽器がある部屋に篭った。


残りの銀の龍と当主達は、慧だけでなく次期龍王の為に

慧の寝室で声を掛けるようにしていた。



リューゼは、慧と金の小龍が結界を出た後に

確実にこちらに帰ってこれるように魔力で道を作る為に

金のパワースポットで瞑想して魔力を蓄えはじめた。



かすかな波の音。眩しい光。

慧と来ると甘く楽しい場所も1人で座っていると

何だか虚しい。


「慧・・・早く私の腕のなかに戻っておいで。」

リューゼはそう呟くと瞑想するために静かに瞼を閉じた。



INDEX BACK NEXT 

 Copyright(c) 2007-2010 Jua Kagami all rights reserved.