君と共に紡ぐ調べ

       第8章 届ケ小サナ歌声 −5−

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最近、子供達は1つの部屋で一緒に眠るようになった。

その中でも一番の早起きは紫龍の子、カノンだ。

カノンは目を覚ますと着替えをして、走ってルネとルイのところに行く。



「「おはよう。カノン。」」

ルネとルイは朝城中に歌声を届ける。

最近、その歌声にカノンのハミングが加わる。

まだ、言葉が覚束ないので歌詞は歌えないが

可愛らしいカノンのハミングは城中に好評である。



〜〜♪おはよう・・・もうおきる時間だよ

 おねぼうしないで目をぱっちりさましてごらん♪〜〜

美しい歌声が城中に響いた。


その歌声が響くと龍妃の寝室で眠っている慧も

かすかに微笑む。

「歌、聞こえてるのですか?もうそろそろ目を覚ましても良いのですが・・・。」

ファルが呟くように言った。



既にあれから2月程が過ぎた。

皆が慧の目が覚めることを願っている。


元々龍の姿でテレパシーで言葉を交わしていたので

子供達は少しずつ話ができるようになり、にぎやかになっている。


しっかり者の蒼龍の子、バルドル。

茶目っ気たっぷりの紅龍の子 アレス。

とにかく優しくてニコニコ微笑んでいる 桜龍の子 クロノス。

一番のいたずらっ子の 黄龍の子 ヘルメス

物静かで小動物が大好きな 闇龍の子 レイ

朗らかでおどけたり、人を笑わすことの多い翠龍のハル。

料理好きでいつも厨房にいる白龍の子 シュウ

歌が好きでいつも何かしら口ずさんでいる紫龍の子 カノン。


子供達の明るさがリューゼを初め、当主や銀の龍達の救いになっている。

最近、子供達はルネとルイに歌を習っている。

ちゃんと歌えるようになったら慧の枕元で歌う予定だ。


「早く目を覚ましてください。」ファルは微笑みながら眠っている慧にそう呟いた。




慧は、白い空間でふわふわした毛皮に抱きしめられて目を覚ました。

金の龍が嬉しそうに慧を見ている。


・・・私の声・・・聞こえる?・・・

慧がそう声を掛けると

・・・きこえる・・・

と幼い声がした。

・・・どうして、ここにいるの?・・・

・・・おかあさま、ぼくがおおきくてたいへんそうだったから、ここつくったの。・・・

・・・そっか・・・

・・・でも、ここつくったら、かあさまとときどきとうさまのこえしかなくなったの・・・

金の龍は寂しそうに言った。


慧は自分がこの空間に来たわけがわかった。

「そっか、君は寂しかったんだね。」

慧はとても優しい顔でそう言いながら、金の龍の大きな頭を抱きしめた。

腕の中の龍が、自分とリューゼの子だと思うと愛しさが増した。


・・・かあさま、ずっとこうしたかった・・・

龍は嬉しそうに言った。

・・・でも、君は間違っているよ・・・

慧は座って龍の頭を撫でながら言った。


・・・どうして?・・・

・・・確かに日々おなかが大きくなるのは大変だったよ。

   でも、全然苦しくなんてなかった。

   君が愛しくて愛しくてどうしようも無かったんだ。・・・


・・・いとしい?・・・

・・・大好きだってこと、毎日自分のおなかの中に君がいることを

   感じて幸せを感じていたんだ。・・・


・・・ほんと?・・・

・・・ああ、それにみんな、君を大切に思っている。

   君が生まれてきてくれることを楽しみにしているんだ・・・


・・・そうなの?・・・

・・・うん。それには、君にもっと栄養あげたいし

   君を産まなきゃいけないよ。・・・

・・・わかってるんだ。でも、こえきこえない。

   こえきこえないとかえるみちわからないんだ。・・・



龍は悲しい声で言った。

慧は龍の頭を撫でながら微笑んで言った。

「大丈夫。リューゼや当主や銀の龍の皆や君の兄弟達が

 助けてくれるよ。」

・・・うん・・・

金の龍も安心したように微笑んだ。



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