君と共に紡ぐ調べ

       第8章 届ケ小サナ歌声 −4−

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慧は金色の光に包まれて目を覚ました。

「う・・・ん?リューゼ・・・?」

慧は隣にリューゼの姿を探したがそこには誰もいなかった。

「あれ・・・?」慧はそう言いながら目を覚ました。


何だか、あたたかい空間は一緒だけど、リューゼと一緒にいる居心地の良さは無い。

そこの空間は真っ白な空間でリューゼが眠りについていた時、

度々慧と会うことができた空間に似ている。



慧は目を覚ますと、周りを見た。

部屋のど真ん中で金色の大きな龍が眠っている。

慧はその龍の近くに行って金色の龍を見つめた。

「この子・・・リューゼでない・・・。」

慧はそう呟いて龍のふさふさした頭を撫でた。


その毛はリューゼが龍になった時と違いふわふわしていて

猫の毛のようである。

「ああ、君は僕らの子なんだね。」

慧は、そう言いながら龍の近くに座り眠っている龍の頭を撫で続けた。

龍は、安心したように「フーーーッ」と息を吐き出すとそのまま眠り続けた。




「リューク、慧は大丈夫か?」

リューゼは龍妃の寝室に寝かされている慧を見舞いながら言った。

この寝室には、リュークやファルや蒼龍の医師数人が常駐し、

慧が少しでも体力を消耗しないように

癒しの治療が施されている。

「はい。今日も良くお休みになられています。」

リュークとファルはそう言うと部屋を出て行った。



リューゼは、慧のそばに行くと慧の顔中にキスの雨を降らせて

頬を優しく撫でた。

「おはよう。慧。今日も天気が良い日だよ。

 早く目を覚ましてくれ。」

リューゼはしばらく慧の顔を見つめていたが

頬にキスをして

「慧を頼む。」と隣室のリュークとファルに言って

部屋を後にした。



「もう、3ヶ月ですものね・・・。」ファルがそう呟いた。




ニコライは、最近会話が多くなってきた子供達のあることに気がついた。

子供達が時々寂しそうに顔を曇らすのだ。



特に一番感受性が強い紫龍のカノンはその傾向が強い。

今日も、1人ポツリと窓際に座っているカノンの傍に座り

ニコライが優しく声を掛けた。


「カノン?元気ないね。どうしたの?」

ニコライはそう言いながらカノンの小さな肩を抱くと

カノンはニコライの服に顔を寄せて言った。

「さみしいのここ。」

そう言いながら自分の胸を指す。



「何で寂しくなるのかな?」

「しらないんだ。」


「しらない?ああ!知らないか。

 えっ。皆カノンのこと知ってるよ。」

「ぼくじゃないぼく。」


カノンはそう言うとニコライの服に自分の顔を擦り付けて

甘えだした。

ニコライはカノンを抱きあげながら何かを考え込んでいた。




夕方、ファルが食堂に行くとニコライがファルに慧の様子を聞いた。

「相変わらずです。まあ、ケイの場合、こんな状態になったことは

 1度や2度で無いので、慣れてはいますが、

 身篭っている状態ですからね。」

ファルも顔を曇らせて言った。



確かに、慧が5歳の時から、ずっとそばで見守っているファルにとって

慧が眠りについて目覚めるというパターンは過去にも何度かあったので

今の慧の状態は慣れているし、自分達には癒しの術をかけて待つしかできない

ことも一番知っているのだ。


「実は、少し気になることがあるのです。」

ニコライは昼間のカナンや子供達の様子をファルに話すと

ファルは興味深そうに聞いていた。


「そうですか・・。その線で考えたことはありませんでした。

 そう言えば、龍王と当主とは深い絆で繋がれているということ、

 我ら銀の龍ですら、ケイの感情は手に取るようにわかるわけですから。

 少しその辺から治療の方も考えましょう。」


「ファル、私達にできること何かありますか?」

ニコライがそう言うとファルは少し考えて言った。

「今は、何とも言えませんが、声は意識に届いているようなのです。

 だから、子供達も連れて来て、ケイに声をかけてください。」


ファルが食堂から出て行くとニコライは少しそこで考えていたが

何かを思いついたように立ちあがり食堂を後にした。



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