君と共に紡ぐ調べ

       第7章 名定マル刻 −1−

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「ゴォオオオオォオオオーー」

闇の中で、大きな闇色の龍が吼える。

吼える声と一緒に紫の稲光を龍が発する。

闇の中、龍は吼えながら空を飛ぶ。


その少し下を闇龍の当主。フェルが飛びながら

・・・ジーク頑張れ・・・と声を掛ける。

闇龍は、闇の空で産まれるのだ。

苦しそうにジークは吼え続けていた。





慧は、リュークと一緒にいつもの場所にいた。

ブラックパールのような黒い艶々した玉がふよふよと

浮いている。


・・・あかるいのがこわい・・・

その玉は怯えたように言う。


・・・怖くないよ。その光の向こうで待っているから。・・・


・・・私も待っているぞ。早く行け。・・・

リューゼも優しく言う。


・・・あったらだっこしてくれる?・・・

・・・抱っこは無理かもしれないけれど抱きしめてあげる。・・・


・・・たのしみ・・・

黒い玉は、嬉しそうに振動すると静かに光りの向こうに消えた。


・・・戻るぞ・・・

リューゼはそう言いながら慧を抱きしめた。

・・・うん・・・闇龍が5番目なんだね。・・・

慧は嬉しそうに微笑みながらリューゼの首に腕を回した。






「ゴォオオオオォオオオーー」

ジークが大きな雄たけびをあげるのと一緒に

闇龍の小龍がポトリと産まれた。

フェルが心配そうにその後を追うと、小龍は自ら小さな黒い翼を広げて

「ゴォォォォーーー」と鳴きながらゆっくりと着地をする。


小龍が降りると、ジークとフェルも降りてきて

交互に小龍の身体を舐めて綺麗にしてあげた。


・・・ジーク、お前は休みなさい。・・・

フェルがそう言うと、ジークはそのまま横になって

目を閉じた。

・・・お疲れ様・・・

フェルの声が闇にとけた。





「ずるい・・・。」

産宮で目を覚ました慧は、元気に寝台の横を歩いている

リューゼを見て口を尖らせて言った。


「どうした?」

リューゼは不思議そうな顔をして言う。

「だって、リューゼはすごく元気そうなのに

 俺はだるくて、起きあがれない。」


「慧、それは銀の龍と共鳴しているという

 とても良いことなのだよ。

 それに辛いのは慧だけでない。」


「何?リューゼも体だるいの?」

「いや。こんなに可愛い顔をして眠っている慧を

 抱くこともできないのは拷問だと思う。」


慧はまじめな顔をしてそんなことを言うリューゼを

殴りたいと心の中で思った。

そう思っていても、他の人の入れない産宮で薬湯を飲ませてくれたり、

食事を食べさせてくれたりと甲斐甲斐しく面倒をみてくれるリューゼを

なんだか許せる気分になるのが不思議だ。



・・・結局惚れているってことなんだろうな。・・・

慧は整ったリューゼの顔を見ながらそう思って小さな溜息をついた。





数日後、フェルとジークはリューゼの作った中庭に小龍と一緒に出た。

ジークとフェルの姿を見ると、蒼龍・紅龍・黄龍・桜龍の

当主や銀の龍が次々と現れてお祝いの言葉を掛けた。


小さな闇龍の小龍は怯えたように、ジークの後ろに隠れている。

他の小龍達は珍しそうに闇龍を眺めていたが、

小龍を見つけて嬉しそうに寄ってきた。


「クリューーー。」

「キューン。」

「ガルルルルル・・・・。」

「グオォオオオ・・・。」

口々に鳴くと、闇龍も小さな声で


「ゴォォォォーーー」と鳴く。

すると、他の龍達は闇龍の小龍を囲み

嬉しそうに飛びながら踊った。


闇龍の小龍も緊張が解けたようで

ジークの後ろからふよふよ飛んで踊りはじめる。

小龍達はしばらく踊りながら鳴きあっていたが

急に皆で追いかけっこをはじめた。



・・・あら、仲がよいですね。・・・

ファルが目を細めて言うと他の者もうなずきながら

飛んでいる小龍たちをみあげた。




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