君と共に紡ぐ調べ

       第6章 命ノヨロコビ −9−

本文へジャンプ





久しぶりに産宮から戻った慧はお預けをくらって

我慢できなくなったリューゼにいきなり押し倒された。

実際、慧自身も身体にリューゼを受け留めなくては子供に影響するのだが

その分、リューゼが金の龍の気をわけることで

凌いでいたのだ。



「リューゼ・・・。」

満たされて疲れ果ててしまったけれど安心できるのは

やっぱりリューゼのそば。

リューゼも慧の気持ちを察してくれてぎゅっと抱き寄せてくれる。


「大好き・・・。」慧はそう呟きながら眠りの淵に落ちていった。




リューゼは、すやすや眠っている慧の頭を優しく撫でた。

「また、無理をさせてしまった。」

自分の対となる立場。掛け替えの無い存在が慧だ。


大切にしたいと思ってはいても、慧を抱いてしまうと

ついつい我を忘れてしまう。

「甘えさせたいと思いながら私が甘えているな。」

リューゼはそう言いながら、慧の額にキスを落とした。





〜〜♪おはよう・・・もうおきる時間だよ

 おねぼうしないで目をぱっちりさましてごらん♪〜〜


聖離宮の朝は、ルネとルイの歌声から始まる。

ルイとルネは、慧から胎教の話を聞いてから

おなかの小龍に優しい歌を作り朝歌うようになったのだ。


リューゼが金の龍の魔法でその歌声が、聖離宮、産宮、

全てに響きわたるようにしてくれた。

小さな子に語りかけるような歌詞が慧や銀龍たちも気に入って

一緒になって口ずさむようになった。



〜〜〜今日も・・みんなで笑って・・・♪〜〜〜

慧は上機嫌で着替えながら歌い、ルネとルイが

歌い終わった後におなかに向かって小さくおはようと挨拶をした。


まだ、おなかはぺったんこだけど、ここの中には

リューゼとの愛の結晶が確かに育っているのだ。

まだまだ育って産むまでは時間がかかる。


それでも、こうして毎日挨拶することがすごく嬉しく感じる慧であった。

「あれ?今日はリューゼ忙しいのかなあ?

 起きたらもういなかったし・・・。

 急な仕事でも入ったのかなあ。」

朝ごはんを食べてから自室に戻りながら慧はそう呟いた。



主治医の蒼龍が回診に来た後、

慧はそのままソファで丸くなって寝息をたてた。

背中に日が当たってぽかぽかと気持ちがよかった。




「慧・・・」

慧の大好きなリューゼの低い声が聞こえる。

同時に優しいキスが顔に降ってくる。

「う・・・ん・・・。」

慧はまだ夢うつつだ。



リューゼは、そのまま慧を姫抱きにして外にでた。

産宮につながる道を歩き、中に入って行く。

いつもなら、そのままそれぞれの部屋に行くのだが

リューゼは、まっすぐに産宮の中にある小さな庭に

向かった。



産宮は、文字通り銀の龍達が小龍を産み育てる場所である。

人型になった龍は一緒には生活できるが

龍本来の姿になると適す場所が違うので一緒には生活できない。

だから産宮は、小さな中庭をらせん状に部屋が囲んでいるような

構造をしているのだ。



リューゼは慧を抱えたまま小さな中庭に入った。

すると、2人の姿はその場所から突然消えた。





「クリューーー。」

「キューン。」

「ガルルルルル・・・・。」

「グオォオオオ・・・。」



慧は、独特な鳴き声でぱっちりと目を覚ました。

目の前に蒼龍と桜龍と黄龍と紅龍の小龍がうれしそうに

ふよふよ浮いている。


その後ろには、ファル、ニコライ、ジャン、アルが

龍になって浮いていた。


慧は不思議そうに周りをみた。

そこは広大な草原で向こうには砂漠が見える。

砂漠の横は海で草原の向こうには森や滝が見える。

森の向こうには洞窟が何個も見えた。



「気にいったかな?」

リューゼが慧の肩を抱きながらそう言う。

「リューゼ?ここは?」

「産宮の中庭に結界を張りここを作った。

 全ての龍が共存できる公園のようなところだ。

 ほら、そこに各部屋への入り口もある。」

リューゼが指差した先にはらせん状に大きな扉が並んでいた。

「すごーーい。」



小龍たちは、嬉しそうに空を飛んでいる。

「リューゼ・・すごい!!

 ここは僕らに命の喜びを伝える場所だね。

 ありがとう。」

慧はそう言うと本当に嬉しそうににっこりと微笑んだ。



INDEX BACK NEXT 

 Copyright(c) 2007-2010 Jua Kagami all rights reserved.