君と共に紡ぐ調べ

       第6章 命ノヨロコビ −8−

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「微熱がありますね。」リュークは眠っている

慧の額に手を当てて心配そうに言った。

元々華奢で少年のような体格の慧だがここに来て

もっと痩せたように感じる。


「それでも、すっかり大人になったのですね。」

リュークは、初めて慧に会ったあたりのことを思い出した。

まだ、5歳でリュークが遊びに行くと

嬉しそうに膝の上にのぼり、ナバラーンの話を聞いているうちに

眠り始める。



「考えてみると私は小さな時からケイの寝顔ばかり見ていたような

 気がする。」

リュークがそう言った時、廊下から聞きなれた鳴き声が聞こえた。




「クリューーー。」

「この声はおちびか?」

リュークは驚いたように立ちあがり扉を開けると

蒼い小龍が部屋に鳴きながら入ってきて

慧の周りをふよふよ旋回した。



「おちび、ケイ様は眠っているのですから、あんまり動きまわらないのですよ。

 貴方は、蒼龍、水の龍だから水浸しじゃないですか・・・。」

「クリューーーー。」

蒼龍は、急に警戒したように廊下の方に向かって大声で鳴いた。



リュークは、驚いたように扉を見つめた。

次の瞬間、「グオォオオ・・・」と言う鳴き声と共に扉が火を吹いた。

「クリューーー。」

蒼龍の小龍がすかさず水を出して火を消すと、扉の向こうから

紅龍・黄龍の小龍が顔を出した。



「あっ。ケイ・・・様?」

リュークが慌てて後ろを振り返ると、慧は突然現れたリューゼに抱きよせられ

金色の淡い光の中でゆっくりと目を覚ました。



「う・・・ん?リュ・・・ゼ?」

リュークも聞いたことのないような甘い声でリューゼに呼びかける。


「慧・・・周りをご覧。」

リューゼは慧の髪にキスをしながら言うと、慧はのろのろと頭を動かし

リュークと小龍を見て驚いたように目を見開いて、両手で口を覆った。



蒼龍は会ったことがあるが他の龍はずっと伏せていたので会ったことがない。

「皆、慧が心配で来てくれたのだよ。」

リューゼはそう言いながら寝台に慧を降ろし、

背中にクッションを入れて体を起こしてくれた。



すると、小龍達が寝台の下に座り寝台に顔を乗せた。

その時、「キューーン・・・・。」と声がして

桜龍の小龍が入ってきた。その後ろにはファル・ジャン・ロベルト・ガイ・アルが続いていた。



「おいで。」

慧がそう言って手を差し伸べると、桜龍の小龍は

他の小龍と一緒に寝台の下に座り顔だけ

寝台に乗せる。



「ふふふっ。皆、可愛い。」

慧はそう言いながら小龍の頭を撫でたり、鼻のところにキスをしたりした。

小龍たちは嬉しそうに目を細めて「グーーーッ。」と気持ちよさそうに唸り

慧の真似をして隣の小龍の鼻を舐めたりしている。



「皆仲良いんだねぇ。」

慧が嬉しそうにそう言うと、リュークが口を開いた。



「あんまりはしゃいでは御身体に障ります。

 小龍たちもそれぞれの部屋に戻らなくてはなりません。」

「一緒にいられないの?」

慧が少し寂しそうに眉を下げて言うとファルが優しい口調で言った。



「龍の子育ては、その龍によって特徴がありますので

 一緒にはいられないのです。

 でも、人型を取るようになったら、一緒にいれますから

 もう少し辛抱してください。」

「うん。わかった。」

慧はおとなしく頷き、小龍たちに別れのキスと祝福を送った。


小龍たちもぐずっていたが、渋々銀の龍達と当主に連れられて

部屋を出て行った。




「早く・・身体直さなきゃね・・・。」

慧はそんなことを言いながら、リューゼに凭れかかって

再び眠りの世界に落ちていくのであった。



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