君と共に紡ぐ調べ

       第6章 命ノヨロコビ −7−

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「リューク・・・ごめんね。

 大変なの・・・に悪いね。」

産宮のベッドの上で慧が元気なさそうに呟いていた。

小龍が3体も一気に生まれたので、

慧にかかった負担は予想以上に大きかったようで

目が覚めたときには寝台から起きあがれない状態になっていた。

心配したリューゼは、産宮にいるリュークに連絡を取り

リュークが慧の容態を診に来たのだ。



「ケイ、話すのも辛いくらいだるいのですから、

 無理に話さなくても良いですよ。

 ファルも小龍の世話に慣れてきたので、

 私の事は気にしないでください。

 久しぶりの人型も新鮮でよいですね。」


リュークは、吸いのみで慧に薬湯を飲ませながら言った。

リューゼはリュークの代わりに蒼龍の小龍の世話をする為に

龍になってファルの傍にいる。


「ありがとう。」


慧はそう言いながら、そっと目を閉じた。





金の龍の頭の上でふよふよ飛んでいた蒼龍の小龍が急に

スピードをあげ、扉を押すと向こうに消えた。


・・・そっち行っちゃだめ・・・

ファルは龍のまま扉のところに行き向こうにいる小龍を部屋に戻そうと

扉を抜けようとしたが体が大きくて扉にはまった。

・・・・戻りなさい・・・・


ファルは廊下に向けてそう言った。

産宮の中には「クリューーー。」と言う吼え声が響いた。





同じ頃、土だらけで土の中にいた黄龍の小龍も穴からひょっこり首を出して

のそのそ歩きはじめた。

黄龍の小龍は、あまり飛ぼうとしないのが普通なので

ジャンやロベルトもあまり心配はしていない。



・・・・あっ・・・

ジャンがまさに扉の向こうに行こうとしている小龍に声をあげた。

・・・行っちゃだめだ・・・ロベルトが言う。

ジャンとロベルトは慌てて扉の方に飛び小龍が尾で閉めた扉に激突した。



同じ頃、ニコライも扉の方へ飛んで行く小龍の首をしっかりと

噛んで引き戻していた。

それでも桜龍の小龍は扉の向こうに行きたがる。


・・・ひょっとして、何か目的があるかもしれませんね。・・・

しばらく小龍の様子をみていたイアンが言った。

・・・行かせたほうが良いでしょうか?・・・

ニコライがそう言いながら小龍を咥えた。

・・・少し待ってください。私に良い考えがあります。・・・

イアンは、人型になって部屋を出て行った。




「グオォオオ・・・」

今日も紅龍の小龍は火を吹いてにぎやかだ。


・・・・はははっ。もっと炎を吹け・・・・

ガイは上機嫌に小龍に言った。

アルは、まだ本調子に戻らずに目を閉じて休んでいる。



・・・あっ・・・そこで火を吹くな・・・

小龍は、事もあろうに扉に向かって相当な火力の火を吹いて燃やし

部屋を出て行った。

・・・待て〜〜〜・・・アル・・・アル・・起きろー・・・

アルが目を覚ましたとき、ガイは尻尾で扉の火を懸命に消していた。





人型になったファルは入り組んだ廊下をバタバタと走って小龍を探していた。

リューゼはファルをドアから引き抜くと、

「先に行く。」と言い残してどこかに行ってしまった。



「まったく、行き先ぐらい言ってくれても良いでしょうに・・・。」



廊下を曲がった所で、同じく人型になり、おでこを押さえながら走ってきた

ロベルトとジャンに会う。

後ろの方からバタバタと走る音がして同じく人型になったガイとアルが来た。

「小龍が脱走したのですね?」

ファルがそう言うと皆が頷いた。



その時、「キューン。」という鳴き声が廊下の向こう側で聞こえた。

「こらっ。私は人型になっているのですよ。

 もう少しゆっくり飛びなさい。」

「ニコライ、一緒にリードを持つと良いかもしれない。」

そう言うニコライの声とイアンの声が聞こえた。

皆が見ると、人型になったニコライとイアンが向こうから歩いてきて

ニコライの上を桜龍の小龍が飛んでいる。


小龍の首には首輪が嵌められて2人でリードを持っている。




「この子が急に外に出たがったのでこうして出てきたのですよ。」

小龍と言っても人型の数倍力があるので引き摺られながらニコライが言った。

「ひょっとしたら、この小龍の行き先に他の龍がいるかもしれないですね。」


ファルがそう言ったので、皆は桜龍の小龍を先頭に産宮の中を歩きだした。



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