君と共に紡ぐ調べ

       第6章 命ノヨロコビ −6−

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「ガルルルルルル・・・。」

銀色の玉を持った黄龍 ジャンが一生懸命に土を掘る。


そこに黄龍の当主のロベルトが水を掛け乾燥しないようにしている。

黄龍は、土の龍なので土の中に子供を産み落とすのだ。

「ガルルルルル・・・・。」


土を掘りながらジャンは苦しそうに吼える。

でも本能でその時が近いと思っているから土を掘るのは止めない。


・・・ジャンあんまり無理するなよ・・・・

ロベルトはそう言葉を掛けるしかなかった。





「キューーン・・・・。」

ナバラーンに2体しかいない龍化した桜龍の銀の龍、ニコライも

鳴いていた。


桜龍は花の龍だけに周りには花びらが舞っている。

ニコライが鳴くと空に花びらが次々と舞う。


そばにいる桜龍の当主。イアンは尻尾で器用に花びらを掃いて

時々、ニコライの背中を軽く叩いてマッサージをしている。


・・・ニコライ、頑張って・・・。

イアンは懸命にニコライを応援していた。





「グオォオオオオオオォオォォオ・・・。」

ものすごい炎を口から出しているのは紅龍の当主ガイだ。

その炎は、紅龍の銀の龍アルの下半身を覆っている。


部屋はすごい温度だが、龍には影響は無いようだ。

紅龍は火の龍なので、火の中で生まれるのだ。


ガイは器用に尻尾でアルの腹を軽く叩いている。


・・・長男は、無理でも2番目には食い込むぞ

   アル!!負けるなあ!!

   早く出て来い!!・・・

何だか張り切っているガイであった。






慧は再び、暗闇にいた。

リューゼがしっかりと慧の手を握っている。

「リューゼ・・・。」

「慧?大丈夫か?見る見る間に顔色が悪くなって心配した。」


リューゼは、確認するように慧をそっと抱きしめた。

「大丈夫?確かに急激にファルの時以上に痛みが走ったけれど

 今は大丈夫だよ。」

慧は暗闇で見えないとわかっていてもにっこり微笑んで

自らリューゼに抱きついた。


「良かった。」リューゼはそう呟きながら額にキスをしてから、

慧を抱きあげた。

リューゼはそのまま淡い光の方へ飛ぶ。



光の近くに行くと慧が驚いたように小さな声をあげた。

「リュ・・・リューゼ・・・。あれ?」

慧が指差した先には、黄色の玉と桜色の玉がありその周りを紅色の玉が

ぐるぐる回っていた。



紅色の玉が・・・早く行かなきゃ・・早く行かなきゃ・・・

と言っている。



黄色の玉は、しばらくふよふよ浮いていたが楽しそうに紅色の玉を追いかけだした。

・・・僕も行く・・・僕も行く・・・



桜色の玉は他の2つの玉を見て驚いているようだ・・・

・・・だあれ・・・?

慧はそばに寄りながら優しく言った。



「私は慧、そしてこの人はリューゼ。

 君達が産まれるのを楽しみにしているよ。」



・・・・わあい!!・・・・

元気に紅色の玉が跳ねる。



・・・わあい!!・・・

黄色の玉も跳ねる。



・・・あったかい・・・

桜色の玉も跳ねる。



「ほら、光の向こうへ行きなさい。

 いとし子達。

 皆が向こうで待っているから。」

リューゼが優しく言う。



・・・いっしょ・・・・

紅い玉が嬉しそうに震える。



・・・こわくない・・・

桜色の玉も震える。



・・・いこっ。・・・

黄色の玉も震えた。





3つの玉はくるくる回りながら暗闇にとけていった。

慧は再び暗闇の中にいてもずっと玉が消えた方を見つめていた。





「ガルルルルルルルル・・・。」


「キューン・・・」


「グオォオオオオオ・・・・」


その日、ナバラーン史上初めて、3つの龍が同時刻に龍を産んだ。



黄龍の小龍は土の中で、桜龍の小龍は花の中で

紅龍の小龍は炎の中で産まれた。


ジャン・ニコライ・アルは小龍の隣でぐったりと眠っている。

・・・よくやった、ジャン。・・・

・・・頑張りましたね。ニコライ。・・・

・・・でかしたアル!!2番目だ!!・・・

当主達もそれぞれ労いの言葉をかけながら、小龍の子守をしていた。




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