君と共に紡ぐ調べ

       第6章 命ノヨロコビ −5−

本文へジャンプ




「う・・・ん。」

慧が目を覚ますと、リューゼがほっとしたように息を吐いた。

「慧、痛いところはないか?」

そう言いながら水を差し出した。


「う〜〜ん、どっちかと言うとすっきりした気分だけど

 ひょっとして心配を掛けた?」

慧は心配そうなリューゼの頬に手を当てて言った。


「ああ。私はあれからすぐに目を覚ましたのだが

 慧は3日ほど眠ったままだったから・・・。」


「えっ?そんなに?すぐ目を覚ましている感覚だけど?」

慧は驚いたように言った。




「もし、慧の調子が良いのなら、一緒にあの子に会いに行こう。」

リューゼはそう言いながら手を差し出すと慧は

嬉しそうに顔を輝かせて言った。

「生まれたの?」

「ああ、リュークの話ではファルも経過が順調だそうだ。」

「わあ・・・見に行く!!抱っこするんだ。」



慧はそう言ってフラフラ起きあがった。

「慧・・・3日も寝たきりだったんだ。急に起きあがるのはやめなさい。

 それに、今日は抱っこは無理だ。

 だから、見るだけだ。それで良いな?」

リューゼはそう言いながら慧を毛布でくるみヒョイと

抱えあげた。


「うん。わかった。」

慧はおとなしく頷いた。



リューゼは、扉を開けると長い廊下を抜け、蒼龍の部屋の方へ歩いて言った。

遠くからクリューという小さな鳴き声が聞こえた。

リューゼが部屋に入ると、リュークとファルが蒼い炎を小さな蒼龍に

かけていた。

「蒼龍はああやって力を子供に渡すんだ。」

リューゼが慧の耳元でそう説明をしてくれた。



小さな龍は、リューゼと慧を見てあわてて、ファルの後ろに隠れた。

「ねえ。リューゼ。少しだけ下に降ろしてくれない?」

慧がそうお願いをしたので、リューゼは「少しだけだぞ。」と言いながら

腕から降ろしてくれた。



慧は、降りるとファルの影に隠れながらも顔だけ出している小さな龍に向かって

笑いかけた。


・・・会えるの楽しみにしていたよ。・・・・

「クリュー・・・。」

小さな龍は、ピタピタと足音をさせて慧の方へ歩いてくる。



途端に「クリュー。」と鳴きながら急に小さな翼を広げて飛びあがった。

「わあ〜〜〜。」

まだ濃くなっていない水色の龍はそれでもちゃんと自分の翼で飛んでいる。


・・・さっきまで、飛ばないから心配していたのですよ。

   龍妃様を待っていたのでしょうかね。・・・

リュークが柔らかい口調で言った。


・・・すごいよ!!でも、こんなに大きいなら抱っこできないなあ。・・・

慧は嬉しそうに手を叩きながらそう言った。


ファルが小さな龍の後ろに飛ぶと蒼い火を掛けながら言った。

・・・飛べましたね。えらいえらい。・・・

その言葉を聞いて慧もニコニコ微笑みながら。

「えらいえらい。」と言って小さな龍の頭を撫でると

小さな龍は嬉しそうに「クリュー・・」と鳴きながら

蒼い炎を出した。




リュークとファルが、「ここは体が冷えるから聖離宮にお戻りください。」

と言ったので、慧はリューゼの腕に抱かれながら

蒼の部屋を後にした。



「リューゼ。俺・・すごく幸せだよ。」

慧がリューゼをみあげながら言った。

「そうか・・?慧がそう言ってくれるのは至上の喜びだな。」

リューゼも優しく微笑んで言いながら、慧にキスをした。



「リュ・・・ゼ・・・ここ廊下だよ。」

「何?誰も見ていない。」

リューゼはそう囁いて、もっと熱いキスを慧に贈った。




「リュ・・・ゼ・・・ごめん・・・。」

慧は急に俯いて言った。

「慧どうした?」

リューゼが不思議そうに聞く。



「誰か、また産気づいているみたい・・・うっ。」

慧はそう言いながら下腹を押さえた。

「慧・・戻る。」

リューゼは慌てて言うと次の瞬間にはそこから消えうせた。




INDEX BACK NEXT 

 Copyright(c) 2007-2010 Jua Kagami all rights reserved.