君と共に紡ぐ調べ

       第6章 命ノヨロコビ −4−

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「産宮に使いをやりましたら、

 蒼の銀龍様がご出産なさっているとのことです。

 おそらく、龍妃様の卵が共鳴なさってこのようになっているかと・・・。」


慧は良くなるどころか苦しみが増している。

「何か、そのような文献がないのか?」

リューゼは慧の髪を撫でながら言った。


「かつては、産宮に龍妃の部屋なるものがあったそうですが・・・。

 そこには私どもは参りませんし・・・。」

「龍妃の部屋か・・・。産宮の従僕に言って至急その部屋を整えるように。

 何かの時があれば、私が妃を抱いて来る。

 この状態が緩和できるなら何もやらないよりましだ。」



体力が無い慧は、痛み出すと苦しみだし、それ以外は目を閉じて休んでいる。

リューゼが微量の金の龍の力を注いでいるので何とか耐えている感じだ。



「ぐっ。」目を閉じていた慧がまた起きて苦しみ始めている。

その時、部屋の準備ができたと知らせが来た。

リューゼは慧が目を閉じ、休み始めた時

慧を抱きあげ、産宮に向かって力を使って飛んだ。



次の瞬間リューゼは産宮の龍妃の部屋の前に立っていた。

扉を開けて中に入るとそこには、大きな寝台があった。

リューゼはいつものように布団をめくると

慧を抱きしめて横になる。



すると、睡魔がリューゼを襲った。

本来リューゼは睡眠の必要がない。

睡魔に襲われるなんてありえないことだ。

「なんなんだ・・・・。」

リューゼはそう言いながら慧をぎゅっと抱きしめた。





その頃、産宮の蒼龍の間から「グリューーーーー。」と吼え声が聞こえていた。

ファルの横にはリュークが付き添い、暴れるファルを押さえている。


・・・・ほら、息をちゃんと吸うんだ・・・・

「グリューーー。」ファルは蒼い炎を出して吼える。


・・・・頑張れ、ファル・・・・

リュークは尾でファルに水を掛けて懸命に励ましていた。





慧は、真っ暗な闇の中で目を覚ました。

あれだけ苦しかったのにどこも痛くない。


「あっ。」

慧は誰かが自分の手を握っている感覚に気がつき

「リューゼ・・・。」と呼びかけた。

「・・・ここは・・・?」


リューゼはそう言いながら目を覚まして

がばっと慧を抱きしめてあわてて言った。

「慧・・具合は大丈夫か?痛くないか?」



慧は微笑みながら「うん。大丈夫だよ。体が軽い感じがする。」と言った。

「うむ・・確かに・・・。」

リューゼは目を閉じて自分の場所を探っているようだ。


「どうやら、ここは精神世界みたいだ。

 あちらに蒼い灯りが見える行ってみよう。」

リューゼはそう言うと軽々と慧を抱きあげてそちらに向かって飛んだ。


1人だと怖い暗闇もあたたかいリューゼの腕の中では安心する。

蒼い灯りに近づくと、丸い蒼い玉がふよふよと浮かんでいた。



・・・・こわいよ・・・こわいよ・・・・

玉がそう言って泣いている。

「大丈夫かい?」

慧がそう優しく話しかける。


それと同時にリューゼが力を使って周りを明るく照らした。



・・・誰・・・?

怯えた声で玉が言った。

「私は慧、そしてこの人はリューゼ。

 君の敵じゃないよ。」



・・・ケイ・・・の声・・聞いたことある。

それに・・・リューゼ・・キラキラ・・・

「たくさんの者がお前と会えるのを楽しみにしている。

 だから、行きなさい。」

リューゼが優しく言った。



「リュ・・・ゼ、この子・・・?」

慧がそう言いながらリューゼを見あげるとリューゼは微笑みながら頷いた。

慧はその玉に向かって言った。

「会えるの楽しみにしているよ。

 抱っこするのすごく楽しみにしているんだ。」



・・・わかった・・・また会える?・・・

「「ああ、会うの楽しみにしている(よ)。」」

リューゼと慧の声が重なった。

玉はふわふわと飛んで暗闇に消えた。




「グリューーーーーーッ。」

ファルが大きく吼えながら水にザブンと浸かった。

それと同時に水が血の色で濁る。



リュークがすかさず水に頭を突っ込んで小さな蒼い龍を咥えて

水から出した。

藁に小さな龍を横たえて、尻尾で軽く叩くと小さな龍は



「クリュー。」と小さな声で吼えながら蒼い炎を出した。

リュークはほっと息をつくと、

水に浸かってぐったりしているファルを引きあげ

小さな龍のそばに寝かせた。




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