君と共に紡ぐ調べ

       第6章 命ノヨロコビ −2−

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数日後、産宮にはニコライ、ジャンが入った。

(黄龍の卵の成長は早いそうだ。)

もちろん、当主であるイアンとロベルトも一緒だ。





「ファル・・・?あの本・・・。」

慧はそこまで言いかけて慌てて首を振った。

今までは傍に当たり前にいる存在が今はいない。

それがすごく寂しかった。



「慧・・・どうした?」

リューゼが入って来て心配そうに慧の頭を撫でる。


銀の龍達がいない分、リューゼは公務を最小限にして

こうして慧の傍にいてくれるようになった。

聖離宮は最近は静かだ。

銀の龍達は、各々の部屋で静かに過ごし

その傍らには父である当主がついている。

サイシュンやアハド、アルまでおなかがめだちはじめていた。



なので、全員の体調を考えリューゼも慧を優しく抱くようになった。

あとは唯、傍にいてくれる。

具合の悪いときは、世話を焼いてくれるが、

その他の時は、ごくごく普通に傍にいてくれる。


一緒に何かしたり、散歩をすることもあるが、

違う本を読んだり、何も考えないで空をぼーっと眺めることもあった。

その空気がとても穏やかで寂しさが紛れるのだった。



次の日、慧はリューゼと共に産宮の方へ

歩いていた。

「慧、産宮は人型に適してなくて、

 各龍に適して作られている。

 だから、今日は、ファルの所を見舞うだけだ。

 そして、体調が悪くなったら連れ帰る。

 わかったかい?」

リューゼが言うと慧はこっくりと頷いた。



産宮は複雑な構造をしているようで

くねくねとした廊下を曲がり蒼龍の宮を目指した。

蒼龍の宮の前にくると、リューゼはパチンと指を鳴らし、

慧のお気に入りの白いコートと白い帽子を出して着せた。


「リューゼは?」

「私は気候の変化に体が対応しているから大丈夫だ。」

リューゼはそう言うと、扉を開いた。


そこはまだ廊下だったが、少し肌寒い。

「そういう事なんだ。」

慧は、自分の白いコートを見て納得したように頷いた。


しばらく歩くと再び、大きな石の扉があり

リューゼが手を翳すと音も無く開いた。

その部屋は、半分がプールになっており

半分が藁を敷いてあるスペースになっている。


プールの中には金色の玉を持った蒼龍が居り、

藁の上には銀色の玉を持った蒼龍が目を閉じていた。

横になったおなかはかすかに膨らんでいる。


「リューク、ファル。」

慧は嬉しそうにファルの方に駆け寄ると大きな蒼龍の

首に抱きついた。


すると、慧のおなかとファルのおなかから金色の光が

出て交わると、卵が共鳴するようにプルプル震えた。


・・・慧・・・体調は大丈夫ですか?・・・

・・・ファル、今日は調子が良いんだ。

   ファルこそ、大丈夫?・・・


・・・龍になったおかげか、かなり調子は良いですよ。

   それよりもここは、体が冷えます。

   あまり長居してはなりません。

   そうでなくても、龍王様に酷使されているのですから・・・。

・・・ファルっ。・・・


その独特の言い方はやっぱりファルで

慧を見つめる目はとても優しい。


・・・ケイ、ここには水があるから冷える。

   もう、帰りなさい・・・。

水に入っていたリュークもそう言ったので

慧は残念そうにファルとリュークの首に抱きついて

キスを落とすとファルのおなかを優しく撫でて言った。


「私は、君に会えるのを楽しみにしているよ。」

そう言うと、リューゼと共にその部屋を後にした。




聖離宮の自分の寝室に戻るとリューゼは

「寒かったか?」と聞いた。


「うん?少し肌寒いと思ったけど・な・・・なにしてるの?リューゼ?」

慧が驚いたように言う。


リューゼが慧をベッドに押し倒したからだ。

「ほら、慧を温めようと思って・・・。

 何、遠慮はいらない。」


腰にくるような声で慧の耳にそう囁きリューゼは

慧の顔にキスの雨を降らした。



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