君と共に紡ぐ調べ

       第6章 命ノヨロコビ −1−

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「ルイ?大丈夫?」

ルイはぐったりとファルに凭れて言った。


「うん・・・ファルありがとう。予想していたよりきついね。」

ルイは、ファルの隣に横になりながら言った。


「むしろ、こんなに責められても龍王を愛し続ける

 慧に尊敬の念をもつ。」

ファルも横になって言って、ルイの肩を抱き寄せた。


「疲れたよ。ファル。」

「ああ。ゆっくりおやすみ。ルイ。」

ファルもそう言いながら目を閉じた。


あれから、また4年あまりが過ぎ、銀の龍全員の

おなかの中で卵が育っている。

慧の体の中でも卵が育ち定着した。


ファルやニコライの卵は順調に成長して

お腹が妊婦のように膨らんでいる。


もう少しすると、産宮と呼ばれる場所に移り

そこで龍を出産することになる。





「慧?」

朝起きたリューゼは慧の頬にキスをしながら言った。

「う・・ん・・・。まだ、眠いよ。リューゼ。」

慧の体に金の龍の卵が定着してから

以前にも増して慧は体力が無くなった。


リューゼに抱かれた次の日はひたすら眠っている。

食事の時だけはリューゼや銀の龍達に起こされる。


「慧・・ご飯食べなさい。」

リューゼは眠くてコクリコクリしている慧の背中に

クッションを入れ体を起きあがらせて

ナイトテーブルに朝食のトレーを置くと

冷たい果実水を飲ませる。


まだ眠くて完全に目の開かない慧の口元に

スープの入った匙を持っていくと慧は鳥の雛のように口を開けた。


リューゼはスープを全部慧に飲ませると

額にキスをして布団をまた掛けてやった。






その頃、産宮と呼ばれる聖離宮と繋がっている宮では

龍の当主達が銀の龍達のために部屋を準備していた。


この宮に入り、出産を終え、子供が人型になるまでは

当主と銀の龍は外に出ることはできない。

龍王と龍妃だけは自由に入ることができる。



「敷き藁、足りてるかあ?」

大きな体に藁を持ったガイがリュークに尋ねた。

「もう少し、欲しいところですね。」

リュークが慎重に言った。


「まあ、リュークも気が重いとは思うが頑張れ。」

ガイはそう言いながら藁を渡した。




龍族と言っても、龍が本来の姿になることは

ほとんどない。

空を飛んで移動するときや戦闘の時くらいである。


しかも、龍族も一般では子供も卵のまま産んで

孵化器というもので孵化させ誕生させ、

人型になるまで眠らせるのが普通になっている。



しかし、次期龍の当主は龍化した銀の龍が

おなかの中で孵化させ出産する。

その後、龍の当主達の力と銀の龍の乳で大きくなり

当主と銀の龍はそこでその龍がどのような龍かを

本能に教えながら過ごす。



なので、産宮に入ってから、当主達も龍の姿になり

子供が人型になるまで人の形をとることはないのだ。

ちなみに意思の疎通はテレパシーで行う。



「さて、もう一働きするか。」

ガイがそう言いながら部屋を出て行った。


「ガイ。それでも喜びの為の不安です。」

リュークは、そう呟いた。




それから、数日が過ぎ

いよいよファルのおなかの卵が重くなって

自力で歩くことができなくなった。


リュークは聖離宮の医師に慧のことを

引継いでファルを力を使って抱きあげた。

「ファル・・・。」

銀の龍達が不安そうにファルを見ると

ファルは微笑んで見せた。



「ファル・・龍の祝福がありますように。」

リューゼと共に側に来た慧が言うと

「ケイは、人のことより自分のことを考えてください。

 頑張るのですよ。」

とファルは慧の髪を撫でた。



慧は涙ぐみながら頷いて言った。

「ファル・・会いに行くよ。元気で・・・。」

「本当、今生の別れじゃないのですから。」

ファルがそう言って頷くとリュークは産宮の方へ

歩き出した。


慧は2人が見えなくなるまで

そこに立って2人を見送った。



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