君と共に紡ぐ調べ

       第5章 育(ハグク)ム命 −7−

本文へジャンプ




慧は、壇にあがると結界を解き

紫龍の術も解いて自分の本来の姿を晒した。



黒い髪に黒い瞳。

会場は一瞬で静かになり、エドワードは驚きで目を見開き

メリッサは両手を口元に当て目を潤ませて壇の上を見あげた。


「エドワード、メリッサ。結婚おめでとう。

 エドワードとメリッサと出会ったのは、私がナバラデルトに来て

 すぐの事でした。2人は私が快適に過ごせるように

 いつも心を配ってくれます。そのおかげで、龍妃となった今も

 平穏に毎日を送り、新しい命を育むこともできております。」


ここで、皆が拍手をした。

「このたび、エドワードとメリッサが結婚するにあたり、

 龍妃ではなく、友の1人として祝いたいという気持ちが膨らみ、

 ここに参りました。

 エドワード、メリッサ本当におめでとう。

 2人に龍王の祝福がありますように。」



その時、慧の隣が金色に光ると人影が急に現れた。

「リュ・・・リューゼ?」



慧は、驚いたように声をあげた。

慧の隣には、金色の長い髪を後ろで括った愛するべき人が

立っていた。



「少し早かったか・・・。」

リューゼは周りを見渡して言った。

「エドワード・メリッサ。このたびのこと、心から祝福する。

 いつも我が妃を気に掛けてくれて礼を言う。

 これからも、今日の日を忘れずにお互いを支えて生きて欲しい。

 我が妃は、新しい命を育んでいる最中故に、

 我の強力な結界の中でないと疲れも激しい故、

 これにて失礼する。」

リューゼは、そう言うと、慧の肩を抱き寄せて金色の光とともに消えた。




「来てくださったのですね。」メリッサは嬉しそうにエドワードを見上げた。

エドワードは微笑みながら頷いてメリッサの肩をそっと抱いた。

「龍王様と龍妃様に祝福されたナバラーン一のカップルだ!!」

誰かがそう声をあげ、温かな拍手が2人を包んだ。







慧が目を開けるとそこは離宮の寝室だった。

リューゼは、慧をそのままベッドに横たえた。


「リューゼ・・・ごめんなさい。」

「慧・・・。」

リューゼは少しだけ溜息をついて言った。


「きちんと説明をしなかった私も悪いが、

 先ほども話したように、卵がある状態の慧は

 私の結界を抜けると疲れるのが早いのだ。

 もし、行きたいのなら私に話しなさい。」

リューゼは慧に柔らかな布団を掛けながら言った。


「ごめんなさい。」慧はそう言いながら目を閉じた。

リューゼが言ったように体が睡眠を欲していたようだ。

「慧・・起きてから、お仕置きだよ。」

リューゼは小さくそう呟くと慧の頬にキスをして部屋を出た。





「リューゼ様がケイを連れ帰ったそうだな。」

寝る前にお茶を飲みながらアハドが口を開いた。

「それは、良かったですね。

 ケイ様はよほどエドワードとメリッサの結婚が嬉しかったのでしょうね。

 お腹の卵も共鳴して喜んでおりましたね。」

ニコライが腹をさすりながら言った。


「ファルが、早めに気づいて対処したからだな。なあ、ジーク。」

「うむ。そうだなジャン。」


ファルは紅茶を飲みながら渋い顔をしていた。

「ファル、どうしたの?」ルイが心配そうに言った。

「いえ。その時、ちょっと切れてしまいまして・・・。」

珍しくファルが口篭った。


「どういうことだ?」アルが眉間に皺を寄せて言った。

「感情的になってしまって、ついつい言ってしまった。」

「何を?」サイシュンが聞いた。


「龍王様がしっかりと妃様を繋ぎとめないからこうなるのですよ。と・・・。」



その時、ファル・ニコライ・アハド・サイシュンが

いきなりうずくまった。甘い疼きに顔が真っ赤だ。

ジーク・ジャン・アルが、ファルとニコライとサイシュンを抱えて

部屋から出て行き、ルイは、アハドの傍に行き

アハドの頭を抱きしめた。




INDEX BACK NEXT 

 Copyright(c) 2007-2010 Jua Kagami all rights reserved.